その執着は、花をも酔わす 〜別れた御曹司に迫られて〜


『わかったでしょう? あなたでは、碇の嫁は務まりません』

昔のことを思い出してしまったせいか、その夜は最も思い出したくない記憶を夢に見た。

『でも、成貴さんは……』
『成貴は納得してくれました。現にこの場に来ていないでしょう? あの子には、相応しい家柄の許嫁がいるんです』
『でも……』
『家柄も弁えず、礼儀作法の一つも身に付けていないあなたの出る幕は無いんです。わかったらお帰りください』

七年前のパーティーの記憶。
碇の家が主催しているパーティーに、彼と一緒に出席するはずだった。
だけど当日、彼は会場にいなくて、彼のお母様は私だけでなく会ったこともない父と母までひどく罵った。
他人からあんなに自分を否定されたのは生まれて初めてだった。
存在そのものを蔑まれるような言葉。
だけど、言い返せるような武器が私には一つも無かった。

あの人に会ったら、また同じことを言われるの?
あんな風に誰かに否定されたくはない。
あの日、どうしてあなたは来てくれなかったの?

目を覚ますと、涙の流れた跡があるのがわかった。
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