おさがり姫の再婚 虐げられ令嬢が最後に手に入れたのは姉の婚約者だった次期公爵様でした

12話 誓いの言葉はいつわりなく

 困惑していたら、ラウルはスッと視線を下げて聖書を開いた。

「第十八代国王アンドレ陛下にお聞きします。隣に立つシュゼット・ジュディチェルリ様にフィルマン王族の一員に迎えることに異論はありませんね?」
「ない」

 迷いなく告げられた言葉に、シュゼットの胸が高鳴った。
 アンドレもまた今日を心待ちにしてくれたようだ。

 少女らしく頬を染めるシュゼットに、ラウルは再び鋭い目を向けた。

「シュゼット・ジュディチェルリ様、病めるときも健やかなるときも、生涯を陛下に捧げると誓えますか?」
「誓います。私の一生をかけて陛下を支えていきます」

 王妃としての新たな人生は辛さの連続だろう。
 しかし、おさがり姫として虐げられてきたシュゼットには耐えられる自信があった。

 血のつながった家族に一員と認められない日々に比べたら、ありとあらゆる責め苦が軽く感じられるはずだ。

 シュゼットが嘘偽りない声を響かせると、ラウルの表情がふびんそうに変わった。

(何か問題があったのでしょうか……)

 シュゼットは不安になる。
 しかし、誓いの言葉の途中で問い詰められるはずもない。

「……そうですか。これにてお二人を夫婦と認め、シュゼット・ジュディチェルリ様の名をシュゼット王妃殿下と改めて儀式を進めさせていただきます」

 式典は次の段階に移った。
 新たに王妃となったシュゼットを披露するのだ。

(この顔を、みなさんに見ていただくのですね)

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