おさがり姫の再婚 虐げられ令嬢は姉の婚約者だった次期公爵様に溺愛される
「お久しぶりですね、みなさん。お元気でしたか?」

「「「はーい!」」」

 元気に手をあげた彼らは、ここで身を寄せ合って暮らしている。

 素直な子たちで、傷跡を見ても変に気をつかったりはしない。
 腫物扱いが苦手なシュゼットはそれが嬉しくて、ここではいつもベールを外すようにしていた。

 この孤児院は、大昔のジュディチェルリ侯爵が作り、金銭的な援助をしてきた。
 祖父が大切にしていたので、シュゼットも大事にしなければと思っていた。

 しかし、シュゼットの父は資金難からとつぜん援助を打ち切った。
 孤児院がなければ眠る場所のない子どもが大勢いるのに、だ。

 このまま見捨てていいわけがないと思ったシュゼットは、よく家を抜け出して手伝いに来ていた。
 子ども服やバザーで売る品を、おさがりから作って持ってきてもいた。
 姉からもらったドレスをお金に変えるのは抵抗があるが、ここの子どもたちに使ってもらえるならいくらでも渡したい。

 王妃になったら簡単には来られなくなるので、結婚前に、寝る間を惜しんで作りためたリメイク品を届けたばかりだった。

「お姉ちゃん、今日はどんな物を作ってきたの?」
「ごめんなさい。今日は、ガストン先生にご挨拶に来ただけなんです。リメイク品はまた後で持ってきますね」

 王妃は忙しいけれど、夜は自由時間みたいなものなのでいくらでも針仕事ができそうだ。

 子どもたちに手を振って別れ、孤児院に併設された図書館へと向かう。
 カウンターに行くと、歪んだ眼鏡をかけて蔵書の管理簿に目を通していた老人が目を丸くした。

「王妃様、どうしてここにいるんじゃね?」
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