16歳年下の恋人は、そう甘くはなかった
十六年ぶりに訪れた産婦人科の待合室には、大きなお腹を抱えた20代くらいの女性、他にも三十代くらいの女性が数人静かに待っていた。
若い女性たちの聖域に、四十路越えの女がぽつんと座っていると、何とも居心地が悪い。
ようやく名前を呼ばれ、逃げるように診察室に入った。


「14週目ですね」

医師の言葉は、まるで裁判官の判決の言い渡しのように、マヤの耳に重く響いた。

喜びよりも圧倒的な不安がマヤを襲う。

二週間後にもう一度来るように言われ、ひとまず自宅に帰された。

四十四歳で出産…。まだどこかで信じられない自分がいる。
モニターで見せられたエコー写真には、小さいがはっきりと顔と胴体だとわかる球体が映っていた。
ユカの時は、感激で涙がこぼれたものだったが。今はそう単純に喜べない自分がいる。

とりあえず、まだ何がおこるかわからない。安定期に入るまではトオルには伏せておくことにした。
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