【漫画シナリオ】小崎くんは川村さんを好きすぎている

20 小崎くんを甘やかす熱



〈過去回想〉

⚪︎場所:病院の休憩スペース

十年前。結莉乃・七歳。
陽介が喘息で入院している頃。

病院の休憩スペースで折り紙をする結莉乃。
→入院患者のおばあちゃんが話しかけてくる。

おばあ「何してるんだい、お嬢ちゃん」
結莉乃「えっとね、鶴を折ってるの! 鶴を千個作るとね、病気が治るんだって! だからたくさん作って、入院してる弟にあげるんだ!」
おばあ「そうかいそうかい。頑張ってねえ」

結莉乃は笑顔で話し、また折り紙を続ける。
その時、ガタン、と音がして、近くで誰かが転ぶ。
→目の上に怪我をした、松葉杖の少年。

結莉乃は咄嗟に駆け寄る。

結莉乃「ねえ、大丈夫?」
少年「……!」
結莉乃「足、けがしてるの? ほら、掴まって」
「大丈夫だよ、ゆっくりでいいから」

結莉乃が手を差し出すと、少年は潤んだヘーゼルの瞳を眩しそうに細め、涙を落とした。

〈回想終わり〉


⚪︎場所:二年二組の教室

先生「こら、川村、起きろー」
結莉乃「!」

授業で居眠りしていた結莉乃。
ぺちんと先生に本で叩かれ、ハッと目が覚めて起きる。

結莉乃(あれ、私、なんか夢見てたような……)
先生「はい、じゃあこの問いは、寝起きの川村に解いてもらおうかな」
結莉乃「へ!? あ、はい! ええと……!」

周りからくすくすと笑い声。
結莉乃は頬を赤らめた。


⚪︎場所:自販機の前(昼休み)

自販機でジュースを購入する結莉乃。
パックにストローを差し込みながら反省。

結莉乃(あー、恥ずかしかった。つい居眠りしちゃったよ、もう……)

結局何の夢を見ていたのかは思い出せなかった。
ただ、懐かしい記憶をなぞっていたような気がして目を細める。
→その時、七組の女子たちが購買にやってくる。

女子A「あーた、今日小崎くん休みなのつまんないねー」
女子B「風邪って言ってたけど本当なのかな、サボってるだけじゃない?」
女子A「でもさっき樹が電話してみたら声めっちゃ枯れてたってよ」
女子B「えーかわいそー、お見舞い行っちゃおうかなー」

会話に聞き耳を立て、結莉乃は目を泳がせる。

結莉乃(風邪……? 小崎くんが?)

どうやら学校に来ていないらしい小崎。
結莉乃が少し心配になっていると、加賀がやってくる。

加賀「結莉乃」
結莉乃「……!」

ぎく、と身をこわばらせる結莉乃。
→加賀から逃げるように背を向ける。
→しかし捕まってしまう。

加賀「そう避けるなよ、傷つくなぁ。最近弁当も作ってきてくれねーし」
結莉乃「……加賀くん……」
加賀「なあ、俺、まだもらってないんだけど。告白の返事」

不敵な笑みを向ける加賀。
結莉乃は目をそらし、場所を移すことにした。


⚪︎場所:非常階段

結莉乃「加賀くんとは付き合えないよ」

非常階段にたどりついてすぐ、結莉乃は告げる。
加賀は一切動じない。

加賀「何で」
結莉乃「……あなたのことをそういう風に思ったことがないから」
加賀「小崎とだってお試し感覚で付き合ったんだろ? じゃあ俺とも付き合えるんじゃねーの」
結莉乃「……だめ。付き合えない」

結莉乃は加賀を見つめ、はっきりと言い放つ。

結莉乃「加賀くんは、前に私に言ったよね。小崎くんは光で、私たちは影だって。光源が強くなればなるほど、影は濃くなって、悪目立ちするだけだって。だから小崎くんと私は釣り合わないって」
「でも、それは違うと思うの。光が本当に強くなりすぎると、影は消えてしまう。光の中に溶け込んで、影を見えなくしてしまう」

加賀はしばらく黙り込み、不敵に口角を上げる。

加賀「……なんだよ。小崎のおかげでお前の影は取っ払われて、光に生まれ変わったとでも言いたいわけ」
結莉乃「ううん。そこまでじゃない」
「でも、影ばかりだった私の心に『自信』っていう確かな光が生まれたのは、小崎くんといたおかげ」

まっすぐ告げる結莉乃。
加賀を見つめて続ける。

結莉乃「加賀くんは素敵な人だと思うよ。でも、私は小崎くんが好き。だから、あなたとは付き合えない。ごめんなさい」
加賀「お試しでも?」
結莉乃「うん」
加賀「じゃあキスぐらいできる?」

問いかけながら、加賀は結莉乃を壁際に追い詰める。
逃げ場を失い、ぎくりと焦る結莉乃。
→迫ってくる加賀から顔を逸らす。

結莉乃「な、何言ってるの」
加賀「小崎とはここでキスしようとしてたろ。お試しで」
結莉乃「こ、小崎くんとも、ちゃんとしたキスなんか一度もできてない! だからだめ!」
加賀「じゃあ俺がキスしたら小崎より先か。そりゃ魅力的だな」

不敵に笑いながら顔を近づけてくる加賀。
結莉乃は泣きそうな顔で加賀を見つめる。

結莉乃「……や、やだ……やめてよ、加賀くん……」
「私、小崎くんじゃなきゃ、嫌なの……」

怯えた表情で呟き、結莉乃は加賀を拒絶する。
やがて加賀の動きはぴたりと止まり、節目がちに。

加賀「……あーあ。ほんと、何一つ勝てねえんだな……」

ぼそりと呟き、ぶにっと結莉乃の頬を手で挟む加賀。

結莉乃「ふぐっ……」
加賀「冗談だよ、バァーーカ。俺がお前みたいなちんちくりんに本気になるわけねえだろ」
結莉乃「へ……」

悪態をつき、加賀は結莉乃を解放する。
脱力する結莉乃。
加賀は折りたたんだ紙を粗雑に投げつける。

結莉乃「え? あの、こ、これは」
加賀「小崎の家の住所と部屋番号」
結莉乃「……!」
加賀「風邪で寝込んでんだとよ。見舞いにでも行けば」

投げやりな言葉。
結莉乃は困惑する。

結莉乃「……いいの? これ、受け取っても」
加賀「いらねーんなら返せ」
結莉乃「い、いる! いります! ……ありがとう、加賀くん」

結莉乃はおずおずとお礼を言い、非常階段から離れていく。
その姿をぼんやり眺めていれば、上の階から双葉が降りてくる。

双葉「……見てるこっちがハラハラしたわ」
加賀「うっせ。大人しく渡すのが癪だったから嫌がらせしただけだ」
双葉「ふーん」

双葉は訝しげに目を細めつつ、階段を降りて加賀の隣へ。

双葉「ねえ、あんたさ」
加賀「なんだよ」
双葉「本当に、翠への嫌がらせのためだけに、川村さんに告白したの?」
加賀「……」

加賀は黙り込んだあと、小さく否定する。

加賀「……いや、違うな」

数ヶ月前、この非常階段で倒れていた加賀。
結莉乃に助けられ、小崎に渡す予定だった弁当を与えてもらった時のことを思い出す。

加賀「……アイツの作った弁当の味が、俺の口に合わなかった。だから告白した」
双葉「は?」
加賀「小崎は甘い味付けが好みだったんだよ。おかげさまで、弁当に入ってる卵焼きもポテサラも、毎回なんか甘ったるかった」
「……だから、俺のために作った弁当なら、どんな味になんのか興味あっただけ」

どこか切なげにこぼし、加賀は天を仰ぐ。
→本心では、小崎のためではなく、『加賀のために』作られた結莉乃の弁当が食べたかった。

加賀「あーあ……カレーとか火鍋とか坦々麺とか、すげー辛いの食って、マジで色々忘れてえ〜……失恋しんど……」
双葉「おっ、いいねえ。失恋仲間同士、放課後一緒に食い行こっか?」
加賀「塾あるから無理」
双葉「うわ、ノリ悪」


〈場面転換〉

⚪︎場所:小崎の家(小崎視点)

ひやりと額が冷たくなり、小崎はゆっくり目を開ける。
→額に濡れ布巾。
→外は夕方になっている。

父「……ああ、起こしたか。ごめんごめん」
小崎「……親父……」

掠れた声で呼びかけると、作業着姿の父親が笑う。
→工場勤務。細身で背が高く、顔立ちは小崎に似ている。

父「どうだ、少しは体調良くなったか? 食欲は?」
小崎「……うん、まあ……そこそこ……」
父「そうか。顔色も昨日よりは良くなってるみたいでよかった。昨晩は本当にびっくりしたんだぞ、制服のままここに倒れてるから」
小崎「ああ……ほんとごめん……家のこと、何もできなかった……」

弱々しく告げる小崎。
父は苦笑する。

父「……そんなこといいさ、気にするな。俺の方こそ悪かったな、体調悪いのに深夜まで帰ってこれなくて。お前には、本当に寂しい思いばかりさせる」
小崎「はは……何言ってんの、俺もう高二だよ……いつまでガキ扱いすんの……」

薄く笑う小崎。
父は目尻を緩め、小崎の頭を撫でた。
→小崎は照れくさくなり、目をそらす。

小崎「……それより、仕事どうしたんだよ。帰ってくるには早すぎるでしょ」
父「ああ、そうだな。少しだけ様子を見に戻ってきたんだ。今からまた職場に戻らないと」
小崎「そう……。俺なら大丈夫だから、心配しないで。いってらっしゃい」
父「はは、そうか、それならよかった。可愛いお友達(・・・・・・)も来てくれてるしな、俺が心配しすぎたみたいだ」
小崎「……可愛いお友達?」

不可解な言葉に眉をひそめる。
すると、自室の扉が開き、その向こうからおずおずと結莉乃が入ってくる。
→小崎驚愕、思わず飛び起きる。

小崎「っ、は……!!? か、川村さっ……ゴホッ、ゴホゴホッ!!」
父「す、翠! 大丈夫か?」
小崎「だ、大丈っ……いや、待って……大丈夫じゃ、ないかも……」

完全に油断していた小崎。
先ほどまで父親に頭を撫でられていたことや、無防備な姿を晒してしまったことを思い出して羞恥心が湧き上がる。

父親はニコニコと満足げで、小崎に耳打ち。

父「あの子、もしかしてお前が夏祭りに誘った子か? 真っ赤な顔して俺の浴衣を借りに来た時の」
小崎「……っ!」
父「ほぉ〜、そうかそうか、良い子そうじゃないかぁ。パパ安心した〜。いいか翠、ちゃんと順序は守って、清らかに交際するんだぞ。元気になるまで、キスも我慢」
小崎「いっ、いいから! 早く仕事に戻れよ親父!」
父「ははっ。はいはい」

小崎は真っ赤な顔で父親を遠ざける。
父は嬉しそうにニコニコし、結莉乃の肩をトンと叩いた。

父「それじゃあ、翠をよろしくね。風邪がうつらないように気をつけて。換気はこまめに」
結莉乃「は、はい」
父「俺はもう出るよ。いってくるね、翠〜」
小崎「…………い、いってらっしゃい…………」

上機嫌で出ていった父。
小崎は頭を抱え、耳まで真っ赤になって俯いている。

小崎「……なんでいるの……」

かろうじて声を絞り出せば、結莉乃はそっとベッドに近づいた。

結莉乃「風邪引いたって、噂になってたから」
小崎「……」
結莉乃「大丈夫? 顔真っ赤だよ。熱高いの?」
小崎「まあ、それは、熱のせいっていうより……。いや、すべて熱のせいです、はい」

失態は発熱のせいだということにして、小崎は結莉乃をちらりと見やる。
結莉乃はぎしりとベッドに腰掛け、身を乗り出して小崎の額や首筋に手を触れた。

小崎「っ……」
結莉乃「ほんと。体、少し熱いね。脈もだいぶ速い」
小崎「……」
結莉乃「ほら、ちゃんと寝て。ゼリーとか買ってきたから、欲しかったら言ってね」

ひやりと冷たい結莉乃の手に誘導され、布団に寝かされる小崎。
→落ちてしまった濡れ布巾も額に乗せられる。

結莉乃は小崎の汗ばむ肌に触れながら、やがて頬の青アザに気づく。

結莉乃「ほっぺ、アザになってる……どこかぶつけた?」
小崎(やべ、それ、陽介くんに殴られたやつだ)
結莉乃「唇も切れてる……痛そう……。しかもこれ、カサブタ剥いだでしょ。血が出てるよ」
小崎「う、うん」
結莉乃「ちょっと見せて、絆創膏貼ったげるから」
「カサブタは痒くても剥がしちゃだめでしょ、バイキン入っちゃうよ」

カバンの中から小さなポーチを取り出しながら叱る結莉乃。
→小さな絆創膏を貼る。
→小崎は柄にもなく緊張し、結莉乃の治療を受ける。

小崎(な、なんだこれ……なんか、まるでガキじゃん、俺)
(怪我したの黙ってて、お母さんに怒られながら治療されてるみたいな)
(……いや、そんなん、本当の母親からされた記憶ないけど)

結莉乃に実の母親の面影と幻想を抱きつつ、小崎はやや気落ちする。
※普段、母親のことは思い出さないようにしている。

小崎「……川村さん、怒ってたんじゃないの、俺のこと」

掠れた声で問いかける小崎。
→結莉乃は表情変えず即答。

結莉乃「怒ってたよ」
小崎「……じゃあ、なんで来たの……」
結莉乃「なんでって、心配だったからだよ。当たり前でしょ」

結莉乃はまっすぐと断言する。
小崎は驚いて目を見張る。
→幼い頃の自分の姿が脳裏をよぎる。


〈回想・幼少期の小崎〉

離婚後、家に帰ってこなくなった母。

夕方の公園で、転んで怪我して泣いた子ども(他人)を、その母親(他人)が心配そうに抱きしめに行く場面を見る。

自分もそうすれば母が帰ってくると思う。
公園の滑り台に登り、自ら飛び降りる。

目の上を怪我、足も骨折。
しかし、母は会いにこない。

涙を落とす。

〈回想終わり〉


小崎「心配、してくれた……? 俺のこと……」
結莉乃「うん。私だけじゃなくて、みんなしてた」
小崎「……でも、俺……川村さんのこと捨てたし、女遊びして、学校中から最悪だと思われてて……」
結莉乃「ちょっと、まだそのつまんない嘘続けようと思ってるの? もう一発ビンタしようか?」
「それ鵜呑みにして小崎くんの文句言ってるの、元々小崎くんと関わりのない人ばっかりだよ」
「小崎くんの大事な人はみんなわかってる。どうせまだ、『小崎くんは川村さんを好きすぎている』って」

やや怒った顔で堂々と宣言する結莉乃。
小崎は息を呑む。

結莉乃「小崎くんはね、もう少し、甘えてもいいと思うよ」
「自分だけが誰かを愛していればいいとか、相手が幸せならそれでいいとか、いつもそんなふうに自分に言い訳してるでしょ」
「本当は愛されたがり屋のくせに」

結莉乃の言葉に、小崎は何も言えない。
結莉乃はひとつ間を置き、控えめに続ける。

結莉乃「……愛されたいって堂々と言いにくいのは、昔、小崎くんのお母さんが帰ってこなかったせい?」
小崎「!」
結莉乃「ごめんね。私、お母さんのこと聞いちゃったの」
「離婚したお母さんが心配して戻ってきてくれると思ったから、自分で滑り台から飛び降りたって話」

結莉乃は言いながら小崎の長い前髪を掻き分け、額の濡れ布巾を取る。
→あらわになった小崎の古傷を優しく撫でる。

結莉乃「小崎くん、私ね、あなたのお母さんには絶対なれない」
「でもね、あなたを大事に思う誰かにはなれる」
「だから、あなたに無茶されると、すごく心配するし、すごく怒る」

結莉乃は表情を歪め、ぽろりと涙をひとつ落とす。
→小崎は硬直したまま目を見開いている。

結莉乃「なんで、勝手に別れるとか言ったの……。下手くそな嘘ついて、バカな男のフリしたの」
小崎「……」
結莉乃「怒るに決まってるでしょ。本当に、小崎くんは、いつも人の話聞かない……」
「私のこと好きなくせに。私のこと、ばかみたいに好きすぎるくせに……」
「だったら、もっと、私に甘えてよ……愛されたいって言いなよ……」

手で顔を覆い、本格的に泣き出してしまった結莉乃。
小崎はしばらく黙っていたが、やがて愛おしげに目を細め、結莉乃の頬に手を伸ばす。

小崎「……マジで最悪。なんで今、そんな風に俺を甘やかすようなこと言うの」
結莉乃「……?」
小崎「俺、風邪引いてるから、キスできないじゃん……」

結莉乃を引き寄せ、ベッドに引き込んで抱きしめる小崎。
結莉乃は息を呑むが、大人しく身を委ねる。
→小崎は母のことを思い出す。

小崎「……俺の母親はさ、すげー弱い人だったの。誰かがそばにいないと崩れちゃうような、脆くて儚い人」
結莉乃「……!」
小崎「昔、俺の親父は異動の多い職についててさ。そのたびどっかに単身赴任して、家になかなか帰ってこれなかった」
「それがきっと寂しかったんだろうな、俺の母親は。親父が家にいない間、いつも違う男の人を、家に連れて帰ってきてた」

小崎は自身の母親のことをぽつぽつと語る。
結莉乃は黙って耳を傾ける。

小崎「俺の母親はさ、誰かに愛されてないとダメな人だったんだよ。だから俺がたくさん愛した。毎日『大好き』って言い続けて、母親のご機嫌取りをして、ワガママなんか言わないで」
「俺が愛を伝え続ければ、きっと俺のことを見てくれるって信じてたんだ」

結莉乃「……」

小崎「でも、浮気が親父にバレた途端、二人はあっという間に離婚しちゃってさ。あとから知ったんだけど、俺の親権は母親側がハッキリ拒否したんだって」
「つまり、俺の伝えてた愛なんて、毛ほどもあの人に届いてなかったんだ」
「そんなことも知らずに、ガキの頃の俺は、決死の覚悟で滑り台から飛び降りたりしちゃってさ。哀れすぎるでしょ、まさに骨折り損だよ」
「あの時、痛くて泣きながら地面に転がって見上げた空、すっげー遠かった……」

母のことを語り終え、小崎は結莉乃に頬を寄せる。
結莉乃は涙目になりながらスンと鼻水をすすり、小崎の背中に手を回した。

小崎は微笑み、続きを語る。

小崎「でもさ、俺、今となっては、あの時滑り台から飛び降りて良かったなと思ってんの」
結莉乃「……え?」
小崎「俺がバカやって骨折ってくれたおかげで、あの日、俺の決死の覚悟は無駄骨にならずに済んだんだよ」

小崎「──だって、君に出会えたから」

小崎は微笑み、ベッドボードに置かれていた折り鶴を手に取る。
下手くそなその折り鶴を見て、結莉乃の脳裏には、松葉杖を持った少年の姿が蘇った──。


第20話/終わり
< 20 / 22 >

この作品をシェア

pagetop