【漫画シナリオ】小崎くんは川村さんを好きすぎている

22 小崎くんと試用期間終了



⚪︎場所:昇降口

一ヶ月後。(次期:十一月)
結莉乃が登校〜昇降口で靴を履き替えるまでの描写。

〈モノローグ〉※第一話の冒頭と同じ

 ──何をやっても平均点。これといった特技もなく、容姿も平凡、成績も普通。
 ──将来の夢や目標も特にない。平凡で普通で、目立たず謙虚に慎ましく。穏やかに日々を過ごせたらそれでいい。
 ──私はずっと、そう思っていた。

〈モノローグ終わり〉

向かいの下駄箱からモブ女子の会話が聞こえる。

女子生徒A「ねえ、聞いて! さっき小崎くんと目が合っちゃった!」
女子生徒B「うそー! ずるい! めちゃくちゃイケメンだよね、小崎くん!」

中履きのスリッパに履き替えながらそんな会話が耳に届き、『小崎くん』という名前に反応した結莉乃の動きがやや止まる。
→結莉乃は口角を上げ、笑顔で女子生徒たちの元へ。
→期待に満ちた明るい表情。

結莉乃「ねえねえ、小崎くんと会ったの? どこにいた?」

モブ女子たちに明るく話しかけ、小崎の居場所を問いかける。
(※第一話とは真逆。対比)
→女子たちは結莉乃に気が付き、「あ、川村さんだ」と言いながら小崎のいた場所を教える。

女子生徒A「売店の近くの渡り廊下にいたよ」
結莉乃「ほんと? ありがとう!」

結莉乃は笑顔で去っていく。
→女子たちは顔を見合わせる。

女子生徒A「川村さん、なんか変わったよねえ」
女子生徒B「ほんと! 明るくなったよね」
女子生徒C「一時期は小崎くんと別れたり復縁したりで周りに色々言われて心配だったけど、本人たちは前より幸せそうっていうか」
女子生徒A「はー、羨ましい〜。あたしも小崎くんに愛されたーい」

談笑しているモブたち。
その会話を聞きつつ佐々木と間宮が通り過ぎ、二人は顔を見合わせる。

佐々木「いやあ、一時期はほんとに別れるかと思って心配してたけど、持ち直してよかったねえ、間宮〜」
間宮「ほんとにね。ウチらの推しカプに別れてもらっちゃ困るわ。悲恋シチュは地雷なんで」
佐々木「わかる。小崎×川村は結婚ルートしか認めん。むしろ式場が来い」
間宮「同意」

頷き合う佐々木と間宮。
→実は過激なオタクだった二人。
→そこへ颯爽と現れ、メガネクイッとするオタク仲間の高城さん。

高城「個人的には小崎のライバルとなる当て馬が現れ、ヒロインである川村さんを取り合って勝負する構図になれば素敵だと思うのですが」
佐々木「うわっ、高城さん!?」
間宮「ほんとに勝負ごと好きだよね……」
高城「なんですか、いいでしょう当て馬とのバトル展開。じゃあお二人はどんな萌えシチュがいいと言うのですか」
佐々木「そこはやっぱり多少強引に小崎くんが川村さんに迫って壁ドンとかさあ〜」
間宮「いやいや小崎くんはやや受け身の方が可愛いって」

それぞれの推しシチュを語らいながら、三人は仲良く教室へ向かったのだった。


⚪︎場所:廊下〜渡り廊下

小走りで渡り廊下へ向かう結莉乃。
→先ほど昇降口で聞いた通り、小崎が渡り廊下で仲間(あみり、樹、双葉)とたむろしている。

あみりが結莉乃に気づく。

あみり「あっ! 翠〜、愛しの川村さんが来たよ〜」
樹「あ、ほんとだ」

結莉乃に向かって手を振る樹とあみり。
→双葉は棒付きキャンディ舐めながらスマホをいじって柱にもたれている。
→一番奥にいる小崎も振り向く。

小崎「川村さん!」

小崎はパアッと明るい表情。
→あみり、樹はニヤニヤ。
→双葉はフンッて感じの呆れ顔。

駆け出した小崎が結莉乃に抱きつく。
→結莉乃は恥ずかしそうにするが、抵抗はしない。

小崎「はあ〜〜ッッ、川村さんきゃわ〜!! まつ毛も眉毛も髪の毛の一本一本ですらもきゃわ! 皮膚も産毛も細胞も全部嗅ぎたい! 食べたい! 咀嚼したい!」

樹「うわぁ、相変わらずヤバいわコイツ」
あみり「中身が残念すぎて逆に清々しい」
双葉「胸焼けしそ〜、オエ〜」

→結莉乃を撫で回す小崎。
→結莉乃はされるがまま。
→友人たちはドン引き。

結莉乃はひとしきり撫で回されたあと、照れくさそうに小崎と向き合う。

結莉乃「あ、あのね、小崎くん」
小崎「ん?」
結莉乃「ちょっと、耳貸して欲しくて……」
小崎「優しく噛んでね!」
結莉乃「食べるわけじゃない」

素早く冷静にツッコミ。
→その後、結莉乃は小声で要件を伝える。

結莉乃「あの……今日、夕方、うちに親いないんだけど……」
小崎「!」
結莉乃「ちょっとだけ……来てくれる……?」

恥ずかしそうにたずねる結莉乃。
→小崎の脳裏には様々な妄想(※モザイク処理)が駆け巡る。
→キラキラした瞳でオーケーする小崎。

小崎「もちろん喜んで」
結莉乃「……なんか変なこと考えたでしょ」
小崎「大丈夫です優しく噛むので安心してください」
結莉乃「何言ってるのよばか!」

べちんっ、と小崎を叩き、結莉乃は顔を真っ赤にして走り去っていく。
小崎は赤く腫れた頬を押さえつつ、目をキラキラさせたまま結莉乃を見送る。

あみり「わお、翠ってば子犬ぐらいお目目キラキラしてるんですけど」
樹「写真撮ったろ」
→スマホでパシャパシャ連写。

小崎「ごめんみんな、俺、放課後にハネムーンの予定できちゃった。カラオケはまた今度ね」
あみり「はいはいはい、ハネムーンでもカメルーンでもセーラームーンでも何でも行ってらっしゃいませ」
樹「ふんっ! 翠がカノジョとイチャついてる間、俺らも三人で仲良くカラオケするもんね! なあ双葉!」
双葉「あ、ごめんけどあたしも今日の放課後パス」
樹「はぁ〜っ!?」

澄まし顔であっさり断る双葉。
樹はびっくりして詰め寄る。

樹「何でだよっ!? お前どうせヒマだろ!」
双葉「ヒマじゃねーし、放課後予定あるし」
樹「何の!?」
双葉「激辛ラーメンの」

ニッと笑い、双葉はスマホの画面を見る。
→加賀とのやり取りの画面。
(『今日の放課後ラーメンね』『塾ある』『終わるまで待っとくからさ』みたいな内容)

→樹はしょんぼりとしょげる。

樹「えー、何だよぉ、みんなして充実してやがる……カラオケ行けるのあみりだけかぁ……」
あみり「何よ、ウチと二人じゃ不満なわけ? へえー、ふーん」
樹「い、いやそういうわけじゃないって! あみりと二人きり嬉しい! 最高! 君は超絶で無敵なアイドル!」
あみり「ふんっ」

拗ねたあみりをなだめる樹。
賑やかな友人たちを見つめ、小崎はフッと笑うのだった。


〈場面転換〉

⚪︎場所:結莉乃の部屋(放課後)

結莉乃の自宅にやってきた小崎。
誰もいないので静か。

小崎「ほんとに誰もいないんだ」
結莉乃「うん。今日はお父さんが帰ってくる日だから、今お母さんが空港に迎えに行ってるの」
小崎「え、お父様!?」
結莉乃「そう。海外に勤務しててね、たまにしか帰ってこれなくて。春に一度帰ってきたから、会うのは半年ぶりぐらいかなあ」

少し嬉しそうにはにかむ結莉乃。
小崎はソファに腰を下ろしながら目を泳がせる。

小崎「ええ……? ちょっと待って、そんな大事な時に、俺ここにいていいの……?」
結莉乃「うん。だって、今日は小崎くんにも大事な用があるもの」
小崎「え」
結莉乃「覚えてないの? 今日で私たちの恋人試用期間、終わりなんだよ」

さらりと告げられ、小崎は目を見開く。
結莉乃は小崎の隣に腰掛け、小崎の肩にぽすりと頭を預ける。

小崎「!」
結莉乃「今度こそ、告白、ちゃんとしてくれるでしょ?」

結莉乃に促され、小崎はしばらく黙り込む。
視線を落とす小崎。

小崎「……うん」

小崎は深呼吸し、ぽつぽつと語り始める。

小崎「……俺、子どもの頃からずっと、自分が誰かを愛していればそれで十分だった」
「相手に振り向いてもらおうだなんて、考えないようにしてた。振り向いてもらえなかった時、悲しくて、虚しいから」

→母親のことを思い浮かべる。

小崎「周りからは、あまりそう見えないかもしれないけど……俺、本当に、自分に全然自信がなくてさ」
「誰かを愛して、誰かのために尽くしている自分を肯定することで、やっと心を保てるような面倒くさいヤツなんだよ」
「だから……川村さんに最初に告白した時も、実を言うと、自分の気持ちにちゃんと自信がなかった。子どもの頃に抱いた感情なんて、本当に恋だったのかどうか怪しいじゃん? でもあの時、勢いで告白したから、後に引けなくなってた部分もあって……だから、〝試用期間〟って免罪符つけて、強引に付き合ったところもあったと思う」

いささか俯き、本音を吐露する小崎。
結莉乃は黙って聴いている。

小崎「この試用期間の真の目的は、多分、俺の気持ちをはっきりさせることだった。ガキの頃に抱いた恋が、本当の恋だったのかどうかを試してたんだ。……どこまでも弱腰な男だよな。本当にごめん」
「でも……」

言葉を区切る小崎。
→脳裏には、結莉乃が怒っている顔や、恥ずかしそうに頬を染める表情、夏祭りで花火を見上げている横顔、体育祭で心配そうに駆け寄ってきてくれた顔が浮かぶ。
→最後に幼い頃の結莉乃から向けられた笑顔が浮かび、小崎は改めて顔を上げ、眩しそうに結莉乃を見つめる。

小崎「……試す必要なんか、まったくなかった」

小崎は結莉乃を引き寄せる。
結莉乃は息を呑む。

小崎「俺の気持ちは間違いじゃなかったって、すぐに気づいたんだ」

結莉乃を抱きしめたまま、小崎は告白。

小崎「川村結莉乃さん。好きです」
「ずっと前から、心の底から……君が、好きです」
「自分に自信のない男でごめん。弱くてごめん。かっこ悪くてごめん。でも、俺……俺は……」

一瞬だけ回想。
→幼い頃の小崎が、結莉乃の存在を示す唯一の証である折り鶴を見つめ、愛おしげに微笑んでいる記憶。
→ずっと結莉乃を追いかけてきたという、確かな記憶。

小崎「俺は、君に……愛されたい……」

絞り出すように本音を告白。
結莉乃は微笑み、そっとポケットからあるものを取り出す。

結莉乃「小崎くん、見て」

結莉乃が取り出したのは、綺麗に作られた折り鶴。
→その折り鶴を開くと、中に綺麗な字で『正規雇用』と書かれている。

小崎「……!」
結莉乃「大丈夫だよ」
「私、ちゃんとあなたを愛してる。私を恋人にしてください、翠くん」

結莉乃は小崎を捕まえ、自分から唇にキスをする。
→小崎は硬直。
やがて結莉乃は唇を離し、恥ずかしそうに顔を逸らす。

結莉乃「え、えへへ……」
「その……こ、これ、ファーストキスなんだからね? 責任持ってよね? もう変なお試しとかじゃなくて、正式に恋人になりますよっていう、私なりの意思表示なんだから……」
小崎「……もう一回」
結莉乃「へ」
小崎「正規雇用なら、俺からも誠意を見せないとじゃん。だからもう一回……いや、あと百回しよ」
結莉乃「は!? ちょ、ばか、調子に乗らなっ……んんん〜〜!」

狭いソファに結莉乃を押し倒し、キスしまくる小崎。
結莉乃はしばらくされるがままだったが、やがて真っ赤な顔で小崎を睨む。

結莉乃「……ばか」
小崎「愛してるよ、結莉乃」
結莉乃「ほんとにばか。……私も大好きだよ、翠くん」

やんわりと笑い合い、再び口付け。
→しばらくイチャイチャしていると、不意に玄関から音と声が。

父「ただいま〜!」

結莉乃、驚いて小崎を突き飛ばして立ち上がる。
小崎はソファから転落。
→間抜けな感じで転がり落ちる。

→予定より早めに家族が帰宅。

陽介「あれ、姉ちゃん帰ってきてるじゃん。うわっ、しかも小崎の靴まである!」
母「あらぁ! 小崎くん来てるのね!」
父「ん? 小崎くんって誰?」
陽介「姉ちゃんがよくうちに連れ込んでる男」
父「ほあっ!? なにッ!? どゆこと!?」

結莉乃は小崎を連れ、ばたばたと階段を降りる。
→勢揃いの一家。
→初登場の結莉乃父が青ざめて小崎を見る。

父「ひいっ、イケメン! ピアスとかつけてる! 何!? 不良!? ママ、どういうことなのこれ!」
母「大丈夫よぉ、小崎くんってヤンチャそうに見えるけど、すっごく良い子だから」
陽介「かなり変人だけどな……」

慌てる父、呑気な母、ジト目で小崎を見る陽介。

父「ゆ、結莉乃! その男は何なんだ……!?」

青ざめている父に向かい、結莉乃ははっきりと答える。

結莉乃「みんな、紹介するね」
「こちら、私の恋人の、小崎翠くんです」

家族の前で初めて、小崎のことを『恋人』だと紹介する結莉乃。
小崎は息をのんだが、微笑む結莉乃と目が合い、小崎も微笑む。

小崎「……はい。俺、結莉乃さんとお付き合いさせていただいています。小崎といいます」
父「こ、こ、恋人……? お付き合い……? 結莉乃と……?」
母「そうよ〜! 彼氏なの! ふふふ、かっこいいでしょ〜!」
父「お、おい、こんなイケメン、本当に彼氏か!? 大丈夫なのか!? 騙されてるんじゃ……!」
陽介「俺も最初はそう思ったよ」

肩をすくめる陽介。
だが、満足げな結莉乃の表情を見て、フッと僅かに口角を上げる。

陽介「……でも、もう何も心配いらないと思う。多分ね」

陽介は呟くが、父はまだ納得いってなさげ。
→「待て、ちゃんと説明しなさい結莉乃!」「パパはまだ認めなぁぁい!」などと喚く父を母が連行していく。
→結莉乃も呆れ顔。

結莉乃「もう、お父さんったら、心配性なんだから……。ちょっと宥めてくるね、待ってて」
小崎「うん」

結莉乃がリビングへ入っていき、玄関には小崎と陽介だけが残される。
陽介はなんとなく気まずそうに小崎を見る。(先日小崎をぶん殴ったため)

陽介「……あのさ……色々誤解だったのは、姉ちゃんから聞いたけど……この前殴ったこと、俺は謝らないからな」
小崎「うん、もちろん。あれは俺が殴られて当然だしね。でも痛かったな〜、さすが格闘技やってるだけあるよ。ありゃどんな暴漢も一撃ですわ。カノジョに優秀な弟がいて俺は安心です」
陽介「ふんっ」

そっけない態度は取りつつも、やはりどこか気まずそうな陽介。
やがてひとつ息を吐き、言葉を続ける。

陽介「……殴ったことは、謝らないけど……お前に大嫌いって言ったことは、一応、謝る……」
小崎「!」
陽介「別に、そこまで嫌いじゃねーよ。……ごめん」

小さく謝る陽介。
恥ずかしいのか、顔は逸らしっぱなし。
→小崎はみるみる頬を緩ませ、その頭をくしゃくしゃと撫でる。
→陽介怒る。

陽介「はあっ!? おい、やめろバカ!」
小崎「いやー、可愛いなあと思ってさあ」
陽介「可愛くねーよ! ガキ扱いすんな!」
小崎「いやいや可愛いよ、君は。俺はさ、昔川村さんに会いたかったのはもちろんだけど、君に会えるのもずっと楽しみにしてたんだ」
陽介「はあ……?」
小崎「君が俺の憧れだった。俺が明るくなれたのは、川村さん一人のおかげじゃない。川村さんや母親に愛されていた君に、あの日、強く憧れたおかげでもある」
「だから、君も俺の恩人なんだよ」
「ありがとう。あの時、俺に希望をくれて」

まっすぐに言葉を告げられ、陽介はまばたきを繰り返す。
→陽介は昔小崎と会った覚えがない。(実際会ってない)

陽介「何の話……?」
小崎「んー、俺の伝説的な昔話?」
陽介「何だそれ」

おどけて笑う小崎。
そうこう話していると、リビングから母と結莉乃がやってくる。

母「ねえ、小崎くん。お夕飯、よかったら一緒に食べていかない?」
小崎「え? いや、俺はそろそろお暇しようかと……。だって、お父様、久しぶりの帰国なんでしょう? せっかく家族水入らずなのに、俺がいたら邪魔だろうし……」
母「それがねえ、パパったら、あなたのことが気になってしょうがないみたいなのよ。少しお話ししてあげてくれない?」
小崎「え?」

きょとんとする小崎。
結莉乃は呆れ顔でため息。

結莉乃「はあ……ごめんね、小崎くん……お父さんが心配性で……。『どんな男か確かめてやる!』って聞かないの……。変な空気にならないといいけど……」
母「ふふっ、大丈夫よ。小崎くんの人柄ならきっとすぐに打ち解けるわ」
「だって小崎くんは、自分のお父さんのことをすごく大切に思っている子でしょう? だから安心よ」

結莉乃の母に笑顔で諭され、小崎の脳裏に自分の父が浮かぶ。
→離婚後、息子を少しでも幸せにしようと、苦労しながら男手一つで愛してくれた父。
→父を思いながら、小崎は微笑み、頷いた。

小崎「……はい。もちろん。俺は、自分の父を心から尊敬していますから」
母「ふふっ。なら、何の心配もないわね! お夕飯食べていって!」
小崎「ええ、それじゃあお言葉に甘えて。それと、今度は俺の父も紹介します。とても良い父なので」
母「まあっ、それは楽しみねえ!」
結莉乃「小崎くんのお父さん、すごいかっこいいよ」
母「ええっ、本当!? うちわ用意しなくちゃ!」
陽介「やめなよ恥ずかしい……」
小崎「あはは!」

和やかな雰囲気の川村一家に招かれ、小崎もリビングに入っていく。
→その背中は、遠い昔に小崎が憧れた、家族に愛される理想の自分の姿と重なっていた。


〈場面転換〉

⚪︎場所:カラオケ(あみり・樹視点)

樹と一緒にカラオケにいるあみり。
→スマホを眺めている。

あみり「おっ。翠のラインのアイコンとホーム画面の写真変わってる」
樹「えっ、永遠に初期設定のままだったアイツが!?」

樹も確認。
アイコンは結莉乃とのツーショットに。
ホーム画像は川村一家との集合写真に変わっている。
→ばっちり父親と仲良くなったのか、結莉乃の父と肩を組んで写っている小崎。

樹「いや何これ、家族写真?」
あみり「ふふっ、良い顔してんじゃーん、翠! 幸せそ〜」


〈場面転換〉

⚪︎場所:激辛ラーメン屋の前(双葉視点)

同時刻、一人でラーメン屋の前の花壇に腰掛けている双葉。
→翠のホーム画面を見つつ鼻で笑う。

双葉「うっわ、何じゃこりゃ。親公認のお付き合いしてますアピールか? けっ、幸せそうでなにより〜」

ぼやいていると、スマホの上部に加賀からのメッセージ通知。
→加賀『いま塾終わった』

双葉「はあ、今かよ! おっそ、寒すぎて凍えるっつの!」

→悪態をつきながらスマホぽちぽち。


〈場面転換〉

⚪︎場所:塾の前(加賀視点)

スマホを見ながらげんなりした顔でため息をつく加賀。

画面には小崎と結莉乃のツーショット。
上部には双葉からのメッセージ通知。
→双葉『遅い! 寒い! 早くこい! 凍る!』

加賀「だっりぃ……」


〈場面転換〉

⚪︎場所:ファミレス(佐々木・間宮・高城視点)

三人でポテトをつまみながらメロンソーダしばいている。
→結莉乃のラインのアイコンも変更、折り鶴の写真に変わっている。
→端っこにピースしてる小崎の手だけ写っている。

佐々木「ねえやばい、川村さんのアイコンに男の手が写ってる! これ小崎くんでしょ! 匂わせキター!!」
間宮「うっそ、見せて!」
高城「たった今入ってきた情報によると小崎側のアイコンは川村さんとのツーショットに変更されたそうですよ」
間宮「何それマジ!? ちょっと誰か小崎のライン知ってる人いないの!? 保存して送ってよそれ!」
佐々木「ほんとにこの二人さあ、お互いがお互いのこと好きすぎてるよね。はあ、うらやまし〜」


〈場面転換〉

⚪︎場所:外(結莉乃視点)

佐々木たちがきゃあきゃあ騒いでいるファミレスの横を、小崎と結莉乃が通りすぎる。

冬が近づく街の中。
イルミネーションで眩しくキラキラ輝いている。
二人は仲睦まじく手を繋ぎ、楽しげな様子。

→一瞬強い風が吹き、小崎の前髪がぶわりと乱れて、目の上の傷があらわになる。

二人が出会うきっかけとなった過去の傷。
風に吹かれて素顔があらわになったまま、小崎と結莉乃は幸せそうに笑い合い、駅までの輝く道のりを歩いていくのだった。


【完】
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