もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 ビル内に入ると、森林を思わせるさわやかな香りが迎えてくれた。

 黒服の彼はエレベーターの前で足をとめ、ボタンを押した。
 到着を待つ間がちょっと気まずかったので、わたしは店内案内のパネルに目を向けた。

 えーと、1階がメインのビューティー・サロンと薬膳カフェ。

 2階はフレンチレストラン〈ルメイユール・プラ〉

 3階にネイルスタジオ、ドレスレンタルショップ。
 4階にジムとエステ、フィニッシングスクール。
 5階から7階は事務所。
 そして8階はVIP専用サロンと書かれている。

 1階から4階の店舗部分は吹き抜けになっていて、大きな窓から差し込む光で室内なのに、とても明るい。
 木材が多用されていて、観葉植物も多く、まるで公園に来たかのようなナチュラルな雰囲気だ。

 ピカピカの金属製エレベーター扉に映る自分の姿を見て、思わずため息が漏れる。

 今日もいつもの、ザ・普段着。
 さすがにエプロンは外していたけど。

 このビルにいる人はみんな、お客さんも従業員も洗練されたおしゃれな人ばかり。
 なんの変哲もない普段着なのは自分だけだ。

 この格好でここに立っているのはかなり恥ずかしい。
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