もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
 うちの店と通り一本隔てただけなのに、本当にまるっきりの別世界だ、ここは。

 でも、こうして店に入ってみると、玲伊さんはすごい人だ、と改めて思う。

 ビル自体は香坂家所有のものだとはいえ、二十九歳という若さでこれだけの店舗を自力で開業して、大成功を収めているのだから。

 よほどの才覚と実力がなければ、そんなこと、不可能だ。

 エレベーターが到着した。
「5階の会議室でオーナーがお待ちですので。下りればお分かりになると思います」
 そう言って、胸に手を当てて、エレベーターに乗ったわたしに深々と頭を下げる彼。
 わたしも慌てて頭を下げた。

 上ってゆくエレベーターとは正反対に、わたしの心はずんずんと重くなってゆく。 
 緊張で胃がきゅうっと縮んでくるのがわかる。


 チンと音がしてエレベーターの扉が開くと、玲伊さんが待っていてくれた。

「やあ、いらっしゃい」

 思わず、目を奪われる。

 玲伊さん、うちの店にいるときとはまるで別人。
 完全にオンの表情。
 自信に満ち溢れた青年実業家の顔をしている。

 
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