もつれた心、ほどいてあげる~カリスマ美容師御曹司の甘美な溺愛レッスン~
第4章 〈レッスン1〉 ハグの効用

 「じゃあ、行ってくるね。お店、頼みます」
 「ああ、行っておいで。玲伊ちゃんによろしく」

 翌週の火曜日。わたしは祖母に見送られながら、約束した午前11時きっかりに〈リインカネーション〉を訪れた。

 実はあれから、気弱な気持ちが頭をもたげてきて、何度も断ろうと思った。

 でも、その度に、あの時の玲伊さんの、熱っぽい眼差しが蘇ってきて、結局、断れないまま、今日を迎えてしまった。


 今日は月に一度の全館定休日と聞いていたので、正面ではなく、なじみの従業員口に向かった。
 警備員さんに名前を告げて、少し待っていると、玲伊さんが降りてきてくれた。

 「いらっしゃい」
 「よろしくお願いします」
 いつもどおりに麗しい彼に連れられて、5階の会議室に向かった。

 案内された部屋は、前よりもコンパクトでシンプルだった。
 着席してすぐにドアがノックされ、笹岡さんと若い女性スタッフが連れ立って現れた。

 わたしは慌てて立ちあがり、頭を下げた。

 笹岡さんは口角を少し上げて、軽く礼をした。
 「加藤さん、この度はお引き受けいただいて、本当に助かったわ。ありがとう」
 「いえ」

 彼女は長い前髪をかき上げながら、美しい所作で席についた。
 笹岡さんは本当に素敵で、つい見とれてしまう。

 アッシュブラウンのロングヘアを緩めに巻き、グレイのタイトなシルエットのスーツに黒シャツを合わせている。
 
 
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