kissしてサイキック‼~無能力者のハズの私が生徒会に溺愛される⁉~

5:幼馴染として

 その日の夜、寮でダラダラしていた私の携帯が鳴った。画面を見ると、朔の名前が表示されていた。
 こんな遅くにどうしたんだろう……。

「もしもし。朔?」
【桜。悪い。寝てたか】
「いや、寝ようとしていたところ。どうしたの?」
「……ベランダ出てくれ」

 まさか、と私は慌ててベランダに出る。
 私の部屋がある二階から下を見下ろすと、街灯の下で朔がポツンと立っていた。

【よぅ】
「何してんの!? 消灯後に部屋を抜け出すなんて! 先生に見つかったら……」
【俺の能力使えばすぐに逃げれるっつーの。それになんか色々腹くくったから、どうしても会いたくてよ】

 朔が私を真っ直ぐ見上げる。

【なあ、もしお前が《仲介者》だったとして、危険な事に巻き込まれる可能性があるってのが本当なら──俺は必ず、お前を守る】
「は、朔?」
【学園長に頭下げて頼み込んだ。俺も生徒会に入れてもらえる事になったから】
「はぁ!?」

 思わず声を上げてしまい、口を抑える。朔はただただ真剣な顔つきだった。
 少しだけ遠いけれど、私を凄く心配してくれているのが伝わってくる。

「……本当に、ありがとう。朔には、守られてばかりだね」
【何言ってんだ。お前にはその価値があるってことだろ。無能力者だのなんだと言われ続けて、ずっと石を投げられてもお前はお前のままいつも明るく生きてきた。……俺は、そんなお前が好きだし、守ってやりてぇと思う】

 朔の言葉に心臓が暴れる。朔は電話越しに自分の言葉を思い出したように声を上げた。

【あ、いや! 幼馴染としてな! 幼馴染として!】
「分かってる。そんな否定しないでよ……」
【わ、わりぃ。……って、いや、違うだろ! い、いや、その、やっぱり、俺は──】

 沈黙が包む。私はしばらく朔の言葉を待ったが、その言葉の終わりを知ることはできなかった。

「ああもう! まぁ、とにかくだ。お前は俺が守ってやる! 誰よりも一番近くでな! ここには両さんもいねぇんだし!」
「うん、ありがとね。私、凄い幸せ者だ」

 そう言うと、朔は携帯を落とした。
 慌てて携帯を拾いなおす姿に思わず笑みがこぼれる。

【じゃ、じゃあ、俺は寝る。お前も寝ろよ。明日も待ってるから早く寮門に来い】
「うん、おやすみ」

 朔はそう言うと、すぐにその場を去っていった。

「先生に捕まらなきゃいいけど……」

 小さくなっていく後ろ姿に少しだけ名残惜しく思いながら、私は部屋に戻った。
< 5 / 19 >

この作品をシェア

pagetop