プライベートレッスン
赤坂エリ
「いつも愛してるって言うけどさ・・・」
セーラー服の赤坂エリは同級生の男から目を逸らす。
「愛ってなに?」
彼女の目からひとすじの涙がこぼれた。
「カット!オッケーでーす。少し休憩入れまーす」
TVドラマの撮影スタッフは休憩せずに次のシーンの用意をする。
マネージャーに連れて来られた赤坂エリは俺に軽く会釈をした。
「はじめまして赤坂エリです。よろしくお願いします」
綺麗な顔から白い八重歯がこぼれる。
「こちらこそよろしく」
赤坂エリ・・・アイドルグループを卒業して今度はドラマの女優を目指すという夢見る少女だ。彼女の知名度はゼロに等しい。口には出さないが誰もが彼女を女優として見てはいないのは明らかだった。

俺の名前は三島光一。職業はテレビドラマの脚本家だ。
睡眠と命を削って脚本を書いても才能がないので面白い話が書けない。
だから視聴率なんか取れやしない。
月9なんて夢のまた夢。もう飲み屋で口にする事もなくなった。
才能のない俺は進むことも戻ることも出来ずにただ留まっているだけだ。
まるで水槽の中にいる金魚みたいに口をパクパクと動かしながらエサを求める。

俺が書いた脚本を元アイドルの赤坂エリが演じる。
平日の午前1時放送の45分ドラマ、視聴率一桁は確実のクソ学園恋愛ドラマだ。
売れない脚本家と元アイドルか・・・まぁお似合いといえばお似合いだけどね。
ちっとも笑えないけどさ。






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