筋肉フェチ聖女はゴリラ辺境伯と幸せを掴む
「駄目か、しょうがない。手は出さないと約束するから、今宵は共に……ローズ?」

 すっかり目がハートマークになってしまった気分の私は、今度は後ろからではなく。ドアとブレイズ様の間に割って入って、正面からゴリラに縋り付く。

「好きです、愛してます、結婚してください」
「ローズ? いきなりどうしたんだ……?」
「こんな素敵な方と婚約出来たなんて夢のよう……! 私、ブレイズ様になら今すぐ抱かれたい程に好きです」

 うっとりする私を抱き止めて、タジタジになるゴリラ。側から見れば異様な光景かもしれないが、この空間には二人しかいないので全く問題ない。

「もしやゴリラの俺を恐れないのか? いや、そもそも男に対して抱かれたいなどと言っては勘違いされ」
「恐るも何も、私は雄々しい男性が大好きですから当然ゴリラも大歓迎。そしてこの大胸筋に顔を擦り付けながら寝たらどれ程幸せか! 信じてください、私はブレイズ様が好きなのです。大好きなんです!」

 ブレイズ様が言い終わる前から早口で畳み掛ける。お願い、私がそれ程までにブレイズ様の筋肉に惚れているのだと分かってください!

「ローズ……まさかあれ程焦がれた赤薔薇の聖女に好きだと連呼される日がくるなんて。俺の方こそ夢を見ている心地なのだが」
「じゃあ抱いていただけますか? どうしてもこの胸に抱きついていたくて」
「くっ……ダメだ! 婚前からそのような破廉恥な事はしてはならない。俺は死ぬ気で我慢するからな」

 予想外に筋肉ゴリラは真面目だった。

「じゃあ抱かなくて良いですから、この胸筋と添い寝させてください」
「……拷問か? いや……それが愛しの婚約者の望みとあれば、そのくらいは漢として叶えてやるべきか」

 ブレイズ様はゴリラから人の姿へと戻る。ゴリラになったせいでシャツは木っ端微塵になり、上半身は裸。その状態でベッドに上がり、私に向かって手を差し出した。
 
「来い、ローズ。ウィルドハート辺境伯として、漢として。その願い叶えてやろう」

 この後。私が狂喜したのは言うまでもない。
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