筋肉フェチ聖女はゴリラ辺境伯と幸せを掴む
 サイモン様は顎に手を当てて「ふむ」と少し考えて、提案する。
 
「では、ウィルドハート辺境伯軍の健康管理をお願いしましょう」
「な……! サイモン、それは辞めてくれ。俺のローズなのに!」

 よく分からないが、サイモン様の案にブレイズ様は反対のようだ。

「ちなみにそれはどのようなお仕事ですか?」
「軍には騎士や魔術師といった多くの人間が所属しております。調子の悪い者がいれば回復し、悩みがある者には相談に乗る。皆が健康であるように気を配るだけの簡単な仕事ですよ」

 サイモン様曰く。

 このウィルドハート辺境伯領はこのトリタニア王国の一番西に位置するという立地の都合上、常に防衛の為の自領軍を持っている。先の戦ではその一部を国へ貸与するという形を取り、出兵していたらしい。そしてそれを率いていたのが、辺境伯であるブレイズ様という訳だ。

「という事は、素敵な騎士様や兵士様が沢山いらっしゃる?」
「その通り。生憎うちの領は他領よりも魔術師が少なく、騎士や兵士が多い。そんなむさ苦しい者達の健康管理なんて、なかなか続けてくれる人間がいないのですよ」
 
(つまりそこは素敵筋肉パラダイスね!?)

「やります。そこで働きます。むしろ働かせてください!」

 私はもう前のめりになって立ち上がり、挙手したのだった。
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