筋肉フェチ聖女はゴリラ辺境伯と幸せを掴む
 ちなみに殴り飛ばされたレオン様は、本当に私達に何も手出しせず、お咎め無しで終わった。あんなに王宮の壁を破壊し、第二王子をボッコボコにしたにも関わらずだ。服従魔法のおかげかもしれないし、レオン様なりの謝罪の心なのかもしれないが、逆にこう全て許されると怖いものがある。今後何かの折に掘り返されて責められるのでは無いかと……。

「……今、別の男の事を考えているだろう」
「え? んっ……」

 性急に唇が合わせられる。私の脳内からは、まるでゴリラパンチを喰らったかのようにレオン様の存在は吹き飛んでいく。

「寝屋で他の男を心に住まわせるなんて許さないからな」

 私はブレイズ様一筋なのだけど……どうやら私の旦那様はかなり嫉妬深いらしい。だから今度からは逃げずにそれも受け止めて、むしろ私からの筋肉愛でやり返すくらいの気持ちで挑もうと思う。
 
「……あ。ブレイズ様、せっかく照明を暗くしていただいた所申し訳無いのですが、明るくしていただけませんか?」

 私の服に手をかけようとしていたブレイズ様だったが、私にその手を掴まれてしまってもどかしそうに一つ咳払いをした。

「ンッ……あのな、これ以上我慢するのは無理だ。それとも、初っ端から羞恥心の欠片も無いパターンか?」
「よく分かりませんが、こう暗いとブレイズ様の筋肉が見えません!」

 そこが一番大事なのに。余す所なく全身の秘められた筋肉まで見るのを楽しみにして、ずっとこの日を待っていたのに!

 私の主張を聞いたブレイズ様はガクッと項垂れた。「そうか……ローズだから俺の筋肉しか見てなくて当然だよな」と呟きながらベッドサイドにある小さなランプを灯してくれる。その小さくて柔らかなオレンジ色の光は、私の希望通り逞しい筋肉を映し出してくれるが。……それと同時に、完全に私に対して欲を露わにしたブレイズ様の表情をも、私の脳裏にしっかりと刻みつける。

「筋肉なんて見ていられないくらいに、愛してやるから。覚悟しておけ」

 その後私が筋肉を堪能できたかは……どうか秘密にさせてください。

 ただ私は『赤薔薇の聖女』で、得意な魔法は強化魔法と回復魔法。自分に回復魔法が使えないのだけがネックです……ね? ブレイズ様。
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