惨夢
第二夜

「……っ!」

 熱いものに触れたみたいに、びくりと身体が跳ねて目を覚ました。

 一瞬、ここがどこなのか分からなくて戸惑う。

(わたしの部屋……?)

 見慣れた天井に柔らかい布団の質感。
 確かめるように触れながらベッドから下りる。

「あれ……?」

 寝た気がしないけれど眠気なんてなかった。
 それよりも大きな困惑が拭い去れない。

 いったい、いつの間に家へ帰ってきたのだろう?

 昨晩のことはよく覚えている。

 柚や夏樹くんに誘われ、合流した朝陽くんと高月くんも一緒に深夜の学校へ忍び込んだ。

 プールで怪談を試したら本当に幽霊が現れて、わたしたちは校舎に閉じ込められた。

 まず夏樹くんが殺されて、柚や高月くんの安否は分からないまま、わたしも殺された。
 朝陽くんも恐らくは────。

「夢だったの?」

 思わず怪訝(けげん)な呟きがこぼれる。

 現に今生きていることを考えると、自ずとその結論に落ち着く。

 目にした残酷な光景も、身体を断ち切った(なた)の感触も激痛も、この上なくリアルだったけれど。

 そんなことを考えていたとき、不意に左腕に鋭い痛みが走った。

「痛っ」

 慌てて袖を捲り、驚いて目を見張った。

「何これ!?」

 腕の内側に5本の切り傷が刻まれていたのだ。

 どれも3センチくらいの大きさでぱっくりと赤い。深い引っかき傷のようだ。

 そのうちのひとつが、シュウ……と小さな音を立てながら消えようとしている。

「い、痛った……っ! なに!?」
< 27 / 189 >

この作品をシェア

pagetop