ビターなフェロモン (短)

「ここで飲んでもいいかな?」

「……ん。じゃあ俺、自分の鞄を持ってくるから。ゆっくり飲んでて」

「ありがとう」


すると皐月くんは、私の頭に手を置いてくしゃりと撫でる。

頭から手を離す際に私のオデコも触り……「熱はないね」と笑った後、自分の教室に行った。


「……さっきの笑った顔、ちょっとだけ蓮人くんに似てたかも」


双子だから、似てるのは当たり前なんだけどね。

久しぶりに蓮人くんの笑った顔を近くで見たから、妙に意識しちゃうなぁ。


『桃』


ドキッ


「うわ、ゎ……っ」


あ~、ダメだ。

今は何をしても、さっきの事を思い出しちゃうよ。

皐月くんといるのに、顔が似てるから蓮人くんとのキスが頭をよぎっちゃう……。


「うぅ、落ち着いて。私……」


そして再び頭を抱える私を、鞄を持って来た皐月くんが見つける。


「桃子、今度は顔が赤くなってるよ? 本当に大丈夫?」


それに対し、私は苦笑いで返すしかなく……。


「パスパス!」
「シュートだ、いけ!」


帰り道、バスケ部がいるだろう体育館を見ることが出来ないまま。

皐月くんと一緒に学校を後にした。



ੈ✩


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