君はビターチョコのように after days

一緒にいるだけで

席に案内してもらうと、俺は和風パスタを注文して、日菜はオムライスを注文した。
「朔夜先輩」
「なんだ?」
「今日、指輪、持ってますか?」
「持ってるけど」
何をするんだ?
「食べ終わったら、中庭に出ませんか?」
「ああ」
「私、ずっと、やりたかった事があるんです」
やりたかった事?
「お待たせしました!」
先に、日菜のオムライスが運ばれて来たが、日菜は、オムライスを食べようとせず、俺のパスタが来るまで、待とうとしている。
「食べないと冷める。温かいうちに食べろ。
俺は日菜と一緒にいるだけで時間は過ぎる」
と言うと、日菜の顔は赤くなった。
そして、日菜は、素直に「はい」と返事をして、食べ始めた。
「日菜が食べ終わるまでに俺のもすぐ、来る」
「はい」と言って、日菜はオムライスを一口食べる。
「どうだ?」
「美味しいです!」
そう言っているうちに、俺が注文したパスタも運ばれて来た。
話しながら、食べていると時間が過ぎるのは、あっという間で、食べ終わると、中庭に出た。
中庭には、たくさんの種類の花が咲いていた。
「綺麗ですね」
「ああ」
「バレンタインの時に一緒に観た映画でこんな感じの場所、ありましたよね」
「そうだな」
「朔夜先輩、指輪交換したいです」
なんだよ。そんな事か。
俺は、ポケットから、指輪を出す。
「いいぜ」
日菜の左手を取って、薬指に着けている指輪をそっと、取る。
こんな時にしか、俺は応えてやれないからな。
「日菜、ずっと、一緒に居てくれるか?」
「はい!ずっと、一緒に居ます!」
その指に自分の指輪を着ける。
「俺のは、日菜が着けてくれ」
もう一つの指輪を日菜に渡す。
「はい!」
俺が左手を差し出すと、小さく細い手で、薬指に指輪を着けてくれた。
「出来ました!」
「次は、大人になってからだな」
「そうですね」
日菜は、笑った。
この笑顔をずっと、守りたい。
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