彼は『溺愛』という鎖に繋いだ彼女を公私ともに囲い込む【episode.2】
後ろを振り向かず前を見たまま言う。何なの、もう。勝手すぎる。
「俊樹さんはお疲れなんですからどうぞ先にマンションへ帰って休んでいてください。私は終業後そちらに行きます」
くるりと振り向いた彼は上から私を見下ろした。何、その目?疲れているせいもあるだろうけど、いつもと違う。
「……これ以上何か言ってみろ。このまま引っ張っていくぞ。それでもいいのか?」
怒った時の例の地を這うような声に変った。まずい。逆らうなと私の警報が鳴った。
「……わ、わかりました。す、すぐに戻りますので……」
逃げるように私はエレベーターホールへ向かった。彼はロビーのソファーに座って携帯をいじりだした。