たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
「どうぞ。お気になさらず。あまりこの子達を見てくれる人も珍しいのです。お店の分はまた作ればいいですし」
手のひら程しか横幅のないぬいぐるみが,ちょこんと私を向いている。
思わずそっと手を伸ばして,私は1匹の白い花柄のぬいぐるみを選んだ。
「この,猫のぬいぐるみ。この子が欲しいです」
伸ばしたその手の上に,はいと簡単に渡された。
軽い重みに,胸がときめく。
「ありがとう,ございます」
思えば自分のぬいぐるみという存在も,少し珍しい。
他の女の子達が経験したことのいくつかが,私には欠けている。
(代わりに何か買っていこう)
周りを見渡せば,そんな風に思うことも必要ないくらい。
魅力的な商品で溢れていた。