たった独りの物語~私を殺そうとしている女の子を自分の手で育ててしまいました~
(訪れたのは見たこともない手練ればかり。金品より先に私の命を迷わず狙う,そんな人たち)
とても恐ろしかったけど,私には魔法があった。
そして魔法はあれど,追い返したり捕まえたり出来るほど,対戦に優れていたわけじゃない。
そんなもののために磨いた訳じゃなかったから。
それでも足りない実力は,相手を返り討ちにするので精一杯だった。
相手のレベルが下がり,私のレベルが上がるにつれて。
私はようやく,息も絶え絶えになりながら敵を生け捕ることに成功した。
その人は敬服しただの何だのと,簡単に口を割ったけれど。
信じられなかった。
その人が口にしたのは,王の右腕とも言われ,宰相でもある王弟の名前だった。
その場かぎりの嘘かと思えば,翌日宰相の首を掴んで連れてきて。
慌てる宰相の反応は,かえって男の言葉の信憑性を高めていった。
『ひっ,わ,私じゃない……おう』
『王?』
『いや,おっ皇子! 皇子に頼まれただけなんだ』