空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
姉貴が、紅羽にデザインのポイントやこだわった点を聞いていて、那知や他のみんなもそれを見ている。
しかし……俺は那知のこのデザインが気になって、それどころではなかった。
まさか…思い出した……?
いや、でも那知には特に変わった様子はないよな……
じゃあ、ただの偶然……?
いや、それにしてはあまりにも組み合わせがマッチしすぎている……
「賢太郎?私の説明、聞いてましたの?」
…紅羽の声でハッと気付き、顎に当てていた手を下ろした。
「あ、あぁ…」
「那知さんの作品ばかり見ているから、私の話を聞いてないと思ってましたわ」
「…それはすまない」
「じゃあ今度はTOKIWAの那知さんからお話を伺うわね」
「はい。よろしくお願いいたします!」
姉貴が那知に使われている素材やそれを選んだ理由などいくつかの質問をし、それに那知が楽しそうに答えている。
あぁ、やはりボーンチャイナか。
強度もあるから、取り皿にはいいと思う。
そういえば工場の社員達の意見も聞いたと言ってたな。
素材についてはこだわっているのかもな。
「なるほどね。それにしても…今回の作品のデザインは、いつもの那知さんとは少し雰囲気が違うわね。私はこういう遊び心のあるのも好きだけど、何か理由でもあるの?」
姉貴が2枚の皿を持って「このピンクは小花柄で、こっちのブルーはマーブル柄だなんて、選ぶだけでも楽しくなるわね」と言うと、それに那知が、ふふっと笑った。
「ですよね。私もそうだったんです」
え……?
「じゃあ、那知さんの経験上?」
「はい。家族でバラバラの色のお皿…だったかな……あ、ちょっと忘れちゃいましたけど……それを選んだら、みんなが違う色のを取ったんですよね。元々7枚あって、黄色と紺色が残って……あれ?2枚…?」
!!
那知、それって……
「それは楽しいわね!同じ色を選んで取り合いになるのもまた楽しそうね」
「そうなんです!ふふっ。…普段はおうちで同じお皿を使うことが多いと思うから…たまには家族で楽しめる様な何かがあったらいいな、って。それが特別な日常みたいで…思い浮かんだんです……っ!」
言い終えた時、急に那知が両手で頭を押さえた。
「那知?」
…思い出した…のか…?
「那知、どうした…頭が痛いのか?」
肩を抱き、落ち着いてゆっくり話す。
俺がパニクったら余計に心配させちまうからな。
「…ごめんなさい…ちょっと急に頭痛が……でもすぐ治ると思うから…」
じゃあ座ってた方がいいな、確か壁際に椅子があったはず……と辺りを見まわすと、なんと紅羽が既に椅子を持って俺達の側まで来ていた。
「那知さん、座った方がいいわ。賢太郎は那知さんが横に倒れないように支えて」
「あぁ……椅子もありがとう、助かった」
「どういたしまして。……かなめさん、あとお料理を乗せた状態を見るのでしたら、もう少し時間がかかりますわよね」
「そうね、小一時間程度かしら」
「分かりましたわ。…賢太郎、那知さんをお部屋で休ませましょう」
「えっ…いえ、このままで大丈夫です…」
「いや、横になった方がいい。俺も一緒に行くから」
「そうよ那知。今のうちに休んどきなって。姉の言うことは素直に聞きなさい」
「だからキリたんはなっちゃんの義理の妹だし」
「いーのよっ、あたしは那知のお姉ちゃんなんだから」
「あはっ…ありがとう霧ちゃん。じゃあ…賢太郎さん、少し休ませてもらうね…」
「あぁ、それがいい。なら部屋のカギを…」
とフロントへ行こうとした時。
「賢太郎、この部屋を使いなさいな」
と、目の前にカードキーが現れた。
「良美さん、ありがとう。使わせてもらうよ」
それを受け取ると、俺は那知の腰を抱いて支えながらその部屋へと向かった。