空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~

♪~~~♪~~~

館内に毎時流れる優しいメロディ。
時計を見ると、もう就業終了時間だ。

共用のワーキングスペースからデザイン課のオフィスへ戻ろうとしていたところに、紅羽さんが岸くんを連れてやってきた。


「那知さん!聞きまして!? 私達にデザインの依頼が来たんですって!あぁ、嬉しいわ!今日はお祝いですわね!女子会しましょ、女子会!」

「そうだってね、私も今、賢太郎さんから聞いたとこ。ふふっ、今度はコンペじゃなくて紅羽さんと一緒に作れるんだもんね。『月舞星舞』の10周年記念デザイン、どんな雰囲気がいいかなぁ……たくさん案が出そうだね!」

ワクワクしながら新デザインへの思いを馳せていると、私の横から賢太郎さんが、ずいっ!と身を乗り出した。

「紅羽、那知を連れ回すなよ。那知は毎日シュウ達相手に疲れてるんだ」

「あら、でしたらお兄様が柊ちゃん達のお相手をなさっては?今日は私が那知さんの疲れを癒して差し上げますから」

「ハァ、ったく……。那知は行きたいか?無理して付き合わなくていいんだぞ?」

なんてやり取りがすっかり本当の兄妹みたい。
昔よりも遠慮がなくて仲良く見えるけど、紅羽さんだから嫌な気持ちにはならないんだ。


「あはは、じゃあ久しぶりに紅羽さんとお食事してきてもいい?早目に帰るから」

「あぁ、那知が行きたいのならもちろんいいさ。たまにはゆっくり息抜きしておいで、食事代も出すからさ。俺も今日は早く帰れるし、明日は休みだし、子ども達と家のことは気にしなくていいからな」

そう私に笑顔を向けて、頭を優しく撫でてくれる。
誰が見ていようがそんなのお構いなしで、賢太郎さんはいつでもこんな風に私に優しい。

「ふふ、ありがとう、賢太郎さん」

「さっすが!社長はいつもシノに優しいっすよねー!シノに対してだけ表情が違うもんなぁ」

「当たり前だ、俺が唯一愛する女だぞ?」

「毎度の事ながら、その当たり前に言っちゃうとこ、尊敬するっす」


「ねぇ紅羽、その女子会、あたしも入っていい?」

「あら、霧子と龍綺さんもいらしたのね。もちろん霧子もよろしくてよ。お祝いと共に日頃の疲れを癒しましょ」


「よし、じゃあ俺ら男チームは子ども達と一緒にいつもの〝粉もんパーティー〞でもするか、うちで」

「やった!ケンタロくん家で〝粉パ〞だって、岸くん!じゃあ、マサキ連れて行くね!あっ、タコと肉はうちが買ってくから!」

「龍綺さん、あざっす!社長、俺はたこ焼き粉とお好み焼き粉とトッピング類持ってくっす!あ、紅羽さん、まだうちにあったよね?」
「うん、この前買った開けてないのがあるから全部持ってっていいよ。あと、申し訳ないけどユナのお世話もお願いね、岸さん」
「もちろん!紅羽さんもゆっくり楽しんでおいでよ」

「キリたんもね!ママしながらの副社長は大変だもん、女子会で羽伸ばしてスッキリしてきてねッ」
「ありがと、龍綺。ふふ、パパとしても頼りになるわね」
「ん~、やっぱキリたんの笑顔は最高~!悶えるぅ~」
「ちょっと龍綺ってば…こんなとこでやめてよね」

なんて楽しい会話の途中…

「十和田社長、相馬さん、あの、よかったら私達がお手伝いに伺います!」

という声が後ろから聞こえてきた。

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