空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~

朝食を終え、お部屋に戻って身支度を整えると、賢太郎さんに抱き締められた。

「化粧すると、ほんと大人っぽくなるな……それにこのワンピースのレトロ柄も似合ってて、すごく綺麗だ」

わあぁ!
こっ、こんなに甘く褒められたことなんてないからびっくりしちゃった…

ていうか、賢太郎さんの方こそラフなのがまた似合っててカッコよくて、さっきまた見惚れちゃったもん。

ストレートの黒デニムにVネックのゆったりめのプルオーバー、そして束感のあるセンターパートの賢太郎さんは、昨日のスーツ姿より5歳以上若く見える。


「あ、ありがと……なんか照れちゃう」

「このピアスがまたシンプルで似合ってていいな。……元彼にもらったの…じゃないよな…?」

「これね、おとといの会社帰りに買ったの!一目惚れしたんだー。小さいけどダイヤなんだよ。せっかくの旅行だし!って、厄落としもかねてちょっと奮発しちゃった、ふふっ」

「そうか……良かった、元彼にもらったのじゃなくて」

「あはは、そういうのはもう身に付けないから。あっ…賢太郎さんはピアスって大丈夫?」

「ん?大丈夫、って?」

「あの…元彼がピアスがダメな人だったのね。だから職場とか一緒にいる時はつけてなかったんだけど…」

「あぁ、そういうこと。俺は平気だよ。これだっていいと思ってるし」

「よかったぁ、ありがとう」

「じゃあこれからは俺が買ってやるな」

「えっ!や、そういう意味で言ったんじゃないの、自分で買うのも趣味みたいなものだからっ」
慌てて、違う違う!と手をパタパタ振る。
だってタカる女みたいに思われたくないもん。


でも…

「俺に買わせてよ。俺が那知に贈った物を身に付けて欲しいんだ。…那知が俺のもの、って意味でもね」

なんて色気を乗せた笑顔で、人生で初めてそんな言葉を言われたものだから、もうドキドキがすごくて…

「あっ、ありがとう。その気持ちだけですごく嬉しくて幸せで…胸がいっぱい…」

「ほんと那知は謙虚だな。そういうところも好きだけど、俺には甘えろよ?」

「ん…ありがとう…何か褒めてもらってばかりで照れちゃうな…」

「那知だって俺の事たくさん見惚れてくれてるだろ?はははっ。…あっ、そうだ。那知、今日の予定は?」


今日の…予定……


急に、しゅうぅ…と心の中の何かがしぼんで、体温が下がる感覚がした。

そっか、もう賢太郎さんとお別れになっちゃうんだ…
つい東京まで…ううん、ずっと一緒にいる感覚でいちゃってた…


ここで別れたら、本当に次に会うことなんてあるのかな…

…と、今になって先の話を全くしていないことに気が付いてしまい……
何とも言えない不安な気持ちを圧して言う。


「えっと……温泉街を散策したりとか…遊覧バスで観光地を巡ろうかな、って。特急が13時のだからあまり回れないけどね…」

何でだろ……あんなに楽しみにしてた観光が、あまり楽しみにならなくなっちゃった…



「そっか。……あぁ……うん、そっか…」

「賢太郎さん?どうしたの?」


私の予定を聞いてから、頭を掻いたり、横を向いたりと、落ち着かない様子だった賢太郎さんから、意外な提案がされた。


「あぁ……あのさ……もし良かったら……一緒に乗っていかないか?俺の車」

「え、車?」

「那知、都内だよな?」

「うん、そうだけど…」

「俺も都内だから」

「そうなんだ!…でも、いいの?私が乗っても…」

「あぁ…一緒にいたいんだ。まだ那知と離れたくなくて……ていうか、ずっと一緒にいたくて」


…きゅーんッ!

賢太郎さんの言葉と少し照れた表情に、胸が甘い音を立てた。

だから…

「ありがとう!嬉しい!」

って素直な気持ちのまま抱きついちゃった。


「那知…ありがと……はぁ、良かった」

賢太郎さんがそんな私をぎゅうって抱き締め返してくれた。


「私ね……すっかり一緒に東京に帰る気でいてね……さっき今日の予定を聞かれた時に、あっ、そうじゃないんだ、帰りは別々なんだ……ここでお別れしたら…次に会うことは本当にあるのかな……って不安で…悲しくなっちゃったんだ…」

「那知…」

「だから……まだ一緒にいられるのがすっごい嬉しいの!」

抱き締められてる腕の中から賢太郎さんを見上げると、私の頭に頬擦りしてくれた。

「ありがとう、那知……同じ気持ちでいてくれて…」

「ううん、私の方こそ。ありがとう、賢太郎さん」

「それでさ、車だと電車より移動時間がかかるからさ…ほとんど観光はできないんだけど……それでもいいか?」

そっか、私が観光するって言ったから気にして…
でも、観光と賢太郎さん、どっちがいいかなんて決まってる。

「うんっ!賢太郎さんと一緒にいられるなら、その方が嬉しいもん!」

自分でもわかるくらい、にっこにっこしちゃってる。
だってほんとに嬉しいんだもん。
うふふふ。



「那知……チェックアウト前にもう一回抱かせて」

「ひゃあわわ!だだダメだって!」

「む。なんで」

「じっ時間が!」

「チェックアウトならまだ2時間大丈夫だよ」

「でっでも」

「こんな綺麗な那知に『一緒にいられる方が嬉しい』なんて可愛いこと言われたらさ……あ、無理やり襲ってその気にさせちゃおうかな。那知的には着衣とか強引なのとか、そーゆうプレイもアリ?」

「ひゃー!」

もう…若く見えても年上でやっぱり大人の色気は健在で、迫られるとホントに受け入れたくなっちゃうから困るんだってば!


「……ク……ほんと那知は可愛いな…マジで押し倒そっかな……ククッ…」


…あっ!

「またからかわれてた!」

「ふ…あっははは、違うよ構いたくなるんだよ、こんなに可愛いんだもんな」
ちゅっ

はわっ!


…もー……私ばっかりあたふたさせて…

よーし、それなら私だって!


「賢太郎さん」
頭を下げて?と手でジェスチャーする。


「ん?なに?」

素直に頭を下げてくれた賢太郎さんの唇に…

ちゅ

って軽くキスをした。


「えっ」

「私も賢太郎さんが大好きだから構いたくなるんだもんっ」

あ、賢太郎さんがびっくりしてる。
ふふふっ。

私だってやる時はやるんだからね!
なんて、してやったりの顔で「じゃあそろそろお部屋を出よっか」とチェックアウトを促した。


…んだけど…

「このキスは、これから愛し合いたい、って返事なんだな、よしわかった」

って色っぽい顔で笑った賢太郎さんが私をひょいとお姫さま抱っこして、奥のお部屋へスタスタ歩きだした。

「…賢太郎さん?」

すると、ベッドにぽすん、て、置かれちゃった。

「えっ、えっ?」


腕時計で時間を確認した賢太郎さんが、私のワンピースを脱がすのに時間はかからなくて。

賢太郎さんの熱を帯びた表情と深いキスに私を求める熱情を知ってしまうと、私のカラダは賢太郎さんを受け入れたくなって…

気持ちを素直にさらけ出したくなって…

このまま…愛し合うことを望んだ。

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