空色の手紙は執着愛の証 ~溺愛は再会とともに~
「那知っ!」

ドアが勢いよく開くと同時に、愛する人の私を呼ぶ声が聞こえた。

そして私の体は尚人から引き離され…気付けば賢太郎さんに強い力で抱き締められていた。


「賢太郎さん…っ」
「那知、大丈夫か?…あぁ、涙が…」

私の顔を覗き込んだ賢太郎さんに言われて、涙が頬を伝っていることに気が付いた。

すると、その頬と目元に賢太郎さんが優しく口付けてくれた。
その行為と気持ちが嬉しくて…

「ありがとう…賢太郎さん……もう大丈夫」

そう言ったのだけど、賢太郎さんは、ぎゅっ!とまた力強く抱き締めてくれた。

「泣くほどだなんて…怖かっただろ……来るのが遅くなってごめんな…ほんとごめん…」

「ううん、賢太郎さんは何も悪くないよ。…来てくれてありがとう……賢太郎さんに会えて…安心して涙が出ただけだからもう大丈夫。ふふ」

「那知…」

ホッとした表情の賢太郎さんが、唇にちゅ…と優しいキスをしてくれた。

「ありがとう…賢太郎さん」

嬉しくて、ふふ、と微笑むと、賢太郎さんが私を椅子に座らせ、その私を隠すように尚人の前に立ちはだかった。


「…林田くん」

「はっ、はい」

「言いたいことは山ほどあるが……まずはこれを返す」

その言葉の後、パサ、とテーブルに何かが置かれた音がした。

ん?と横から覗き見ると、それは私が尚人から渡された、お金の入ったあの封筒。

お昼に賢太郎さんが「俺が預かる」って言ったから渡しておいたんだった。


「えっ……これは僕が那知にあげたお金じゃ……」

「そうだ。手付かずで入ってるはずだ。確認してみろ」

「な、何で社長が……」

「いいから確認しろ」

「っはい」
強めに言われた尚人は急いで封筒から出して数えた。

「…確かに渡した分、ちょうどあります。…那知、これ使わなかったの?」

「あぁ、宿泊代は夫になる俺が出した。一緒に泊まったからキャンセル料も必要ない」

「え…一緒に…って……」

「一緒に部屋の露天風呂にも入ったし、もしかしたら…もうここに俺の子ができ始めてるかもな。なぁ、那知」

なんて、ニヤリと笑って私の下腹部を優しくさする。

「ひゃあ!けっ賢太郎さん!そそそういうこと言わないでっ」


「えっ……那知、僕を裏切ってないって言ってたよな…?」

「えぇ、裏切ってなんていません。賢太郎さんとそういう関係になったのは、林田さんと別れてからですから」

「別れてからって…まだ数日だぞ?それでもう体を許したのか?僕は2か月も待ったのに?」


「林田くん。俺は前から那知の事を知っていてな、那知がお前と別れてフリーになったと知ったから、那知に猛アタックしたんだ、土曜日にな。だから俺達は、お前達夫婦の浮気から始まった付き合いとは違うんだよ」


えっ?私を知っていた、って…
あ、もしかしたら霧ちゃんから聞いていたのかな。


「……っ!何だよ……僕だけが悪い様に言うなよ!那知が……那知が僕を一人にするから…!」

「…私に何か落ち度があったとでも?」

そう言うと、尚人は小さな子供が言い訳をするかの様に喚いた。

「だって那知は来てくれなかったじゃないか!…でもリナは毎週来てくれたんだぞ!あの距離を!新幹線代だってバカにならないのに…自分の給料から出したって言ってたよ。それでも僕に会いたいからって!…恋人に放っておかれてたらさ、そこまでして来てくれる人の方を好きになるに決まってるだろ!?」


はぁ…やっぱりね…


賢太郎さんが後ろを振り向き、私を見た。
「那知、言いたいことは言っておけよ」

「うん…ありがとう」

賢太郎さんは私の気持ちを理解してくれている。
それがとても嬉しくて心強い。


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