ドロ痛α様に狙われて

 目を丸くする私の瞳に再び映ったのは、一度視界から消えた黒髪の王子様。

 窓から上半身を乗り出したと思ったら

「来て」

 芝に足の裏がべったりな私に向け、片手を伸ばしてきた。


「……えっと」


 膨らみのほぼない胸元に私が手を引っ込め戸惑ってしまうのは、当たり前だとわかって欲しい。

 赤みがかったユルふわポニーテールが揺れる拒否反応が出てしまうのも、許して欲しい。


 だって東条くんが入りこんだ建物は、旧校舎。

 立ち入り禁止区域。

 野いちご学園の生徒なら「絶対に入っちゃダメ」と、入学当時から刷り込まれているところ。


 旧校舎に侵入したらどうなるかと言うと……

 親に即連絡。

 1週間の停学処分は免れない。

 停学が明けても、罪が償われたわけではなく。

 全校集会でひとり壇上に登り、「申し訳ありませんでした」の謝罪ショーを披露しなけいればいけないんだ。

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