追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる

 ジョーは私を抱きしめたまま、頬を擦り寄せる。

「やめてよ、ジョー!みんな見ているんだから!」

 慌てて突き放そうとするが、私の力ではジョセフ騎士団長をどうにかすることなんて出来るはずもない。だから私は、人形のようにひたすらジョーに抱きしめられる。

 こんな私たちを見て、

「熱い熱い。僕、もう行くねー」

手をぱたぱたさせて、セドリック様が出ていってしまう。それに続いて、オストワル辺境伯とヘンリーお兄様まで!
 こうやって、余計な気を利かせなくてもいいのに。そして、二人きりになると、さらにジョーは暴走するだろう。

「ジョー……離して」

 力任せに出来ないため、そう告げるが……

「嫌だ」

 ジョーは私を抱きしめたまま、子供みたいに言う。

「アンから離れたくない。アンが可愛いから悪い」

 子供なのかと突っ込みたくなるほど、ジョーは素直でまっすぐだ。そしてこんなジョーに、さらに溺れてしまう私がいた。

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