追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
「ともあれ、婚約おめでとう、アン」
師匠の言葉に、薬師の先輩たちも口々におめでとうと言う。
「アンがオストワル辺境伯領のジョセフ様と結婚すると聞いてびっくりしたわ!」
「どんな大男かと思っていたけど、実はスマートなイケメンだったのね!」
祝福されてすごく嬉しいが……
「みなさん、彼のことを知っておられたのですね」
私は複雑な気持ちでいっぱいだ。オストワル辺境伯領のことは知っていたが、ジョーの話なんて聞いたこともなかった。ジョーの名は、私の想像以上に知られているらしい。
申し訳なさそうな師匠が教えてくれた。
「アンには、外の世界に興味を持たないようにと、極力何も言わないように言われていたのじゃ。
アンが王宮治療院にいる限り、その身は守られるから」
「でも、アンはもう自由の身だものね。
外の世界を存分に楽しんでらっしゃい!」
私の知らないところで、こんなにも人々に守られていたことを思い知った。確かに王宮にいた頃は世間知らずだったが、こんなにも大切にされて幸せだった。
そして、これからジョーとオストワル辺境伯領で幸せな時間を過ごしたい。
「皆さん、本当にありがとうございました!!」
私は深々と頭を下げていた。