追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
お兄様がやってきました




 治療院は今日も忙しい。
 といっても、疫病の流行が落ち着いた今、来る人は大半が無駄話やら差し入れを持ってきてくれる人なのだが。
 無駄話も、大半がジョーと私との恋愛話となっていた。

「アンちゃん、結婚式はいつなの?」

なんて聞かれるが、正直そんな話は上がっていない。プロポーズもされていないし……だけど、ジョーは私のことが好きなのだ。キスもした。そう思うと顔が真っ赤になってしまうのだった。
 ジョーとの結婚にはまだ障害があるが、ジョーの言う通り本当に何とかなるのかもしれない。

「ジョセフ様があんなににこやかなのも、アンちゃんがいる時だけだからね」

 女性が言う。

「この前、街でジョセフ様が女性に話しかけられていて、ジョセフ様すごく冷たい顔をしていたよ」

「……え?」

「ジョセフ様がアンちゃんにあんなに優しいから、人が変わったんだと思ったんだろうね。
 でも、結局ジョセフ様はジョセフ様だった」

 そうなんだ……特別扱いをされて申し訳ない気持ちでいっぱいだが、内心安心でもあった。ジョーは本当に私だけを見てくれているのだと思って。
 そして、ジョーを思うだけでまた胸がきゅんと鳴るのだった。


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