追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる


 こうやって時間が過ぎて昼前……

「アンちゃんのおかげで腰の痛みがすっかり良くなったよ。ありがとう」

「いえいえ、お元気になられて良かったです。
 しばらくは毎日湿布を貼ってくださいね」

 患者を送り出した時、門の前に鎧を着た男性を数人見つけた。鎧を見るとビクッとしたが、この前の黒い騎士とは違う鎧だ。兜は被っていなく、手に持っている。
 そしてこの男性たちの周りには辺境伯領騎士団も集まっており、話をしているのだ。お互い穏やかに話をしており、トラブルになっているようには見えない。一体どうしたのだろう。もしかして、辺境伯領騎士が鎧を着ているだけなのだろうか。

 
 不安になった私のほうに、足を引きずりながら歩いてくる男がいた。私と同じような赤毛と赤い瞳で、肌はほんとのりと白い。背が高く、どことなく懐かしい雰囲気がある。
 彼は煌びやかなスーツを着ており、ひと目で貴族だと分かった。貴族の中でも、すごく身分が高い人だろう。

 彼は私の前で立ち止まり、

「アン!」

目を潤ませて私を呼ぶ。

「……え?」

 こんな人のこと、私は知らない。そして、私の名を知る高貴な人は、王宮関係者だろうか。王宮と聞くと背筋がゾゾっとした。私はどこかの侯爵から指名手配されているらしいし、この人も私を捕らえるために来たのだろうか。
 そして、こんな時に限ってジョーがいなく、心細く思う。

「アン!一目見て君だと分かったよ。
 ……大きくなったなあ!」

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