追放された薬師は、辺境の地で騎士団長に愛でられる
その話を聞き、背中がぞっとする。
きっと、お父様もお母様もすごく怖かっただろう。今の私には縁のない話だが、急に怖くなってくる。
だが、それを察するかのように、ジョーがぎゅっと手に握ってくれた。
「両親が亡くなり、僕は親戚に引き取られた。アンも引き取られる予定だった。
だが、僕もアンも今後命を狙われる可能性があるから……せめてアンだけでもと、王宮治療院に引き取られた。
アン、母上が王宮薬師の皆と良好な関係だったから、薬師たちは君を喜んで受け入れてくれたんだよ」
「そうなんですね……」
私は、お母様みたいな才能もない普通の薬師だった。それは耳が痛い話だ。だが、王宮で何不自由ない生活を送っていたのも、お母様のおかげだったのだ。
私は、そんなに賢明で優しいお母様を持って、誇らしく思う。
「アン。君には、両親や僕の話をしないようにという決まりになっていた。
君が色々知ったら、面倒な事件に巻き込まれるかもしれないから」
そうなのか。だから私は、両親やお兄様の名はおろか、ポーレット家出身だということすら知らなかったのだ。