ハーフ☆ブラザー その瞳もこの唇も、僕よりまいさんの方がいやらしいのに?
私は、君に『お父さん』と呼びかけられるのが、好きなんだ」
痛いくらいに強く力のこもった抱擁(ほうよう)が、宙に浮いたように心もとなかった僕という存在を、確かなものとする。
あの人のしたほとんどの行いは倫理にも常識にも反していて。僕にとっては、(ふた)をしておきたい過去ばかりだけど。
あの人が僕をお父さんの子供だと偽ってくれたことだけは、素直に「ありがとう」といえる気がした。
お父さんの肩に額を寄せ、目を閉じる───最後に残った涙のしずくが、頬を伝った。



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