俺が貴女を護ります~エリート海上自衛官の溺愛~
「早く帰ってきて……早く会いたい……」

 航平宛てにメッセージを打ち込むが、それらを送ることはない。
 揺れる視界で画面が見えなくなる。目の奥から湧き出る涙が零れないようにと堪えても大粒の雫がぽたぽたと落ちて枕カバーの色を濃く染める。

 航平に出逢う前までは、この生活が変わることはなく自分の運命なのだと諦めていた。
 しかし、航平と交際してからは、自分が幸せになる未来を夢に見るようになっていて、自分が変わらなくてはこの生活も変わることはないとわかっていた。

「私、航平くんとこの先やっていけるのかな……」

 ひとりでいることの不安はそれほど大きくはない。ただ、自分が不安定な時、彼の安否を確認することもできなければ、傍にいてくれることもない。
 それに加えて、エリート自衛官の航平と自分とでは釣り合わない。その考えが根底にあった。
 見合いの話もあっただろうに、それを断ってまで自分に尽くしてくれているのだろうか。
 自分のせいで、航平にとっての最善の未来を潰してしまっているのではないか。

 夜闇はそういった泥沼に引きずり込まれるような闇に足首を掴まれてなかなか戻れなくなる。やがて闇が自身の心にまで侵食してきて、結芽を悶々とさせ、悪い方向へと思考を変えられてしまう。

「もう、わかんないや」

 どれだけ泣いたかはわからない。女が支度を終えて外に出かける音は聞こえた。
 気づくと結芽は涙を流しながらそのまま眠りに落ちていた。
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