俺が貴女を護ります~エリート海上自衛官の溺愛~
 結婚式では航平は片肩から前部にかけて吊るされた飾緒をつけた白の礼服を着用し、儀礼刀を腰にさげた服装であった。そのため、まるでおとぎ話の王子様のような姿に結芽はどきっとしてしまうなど、新婚の熱の高さと新鮮さを感じさせる結婚式となった。

 「初めてこんなにたくさんの自衛隊の人たちを見たけど……制服とか礼服だとすごいね。おとぎ話というか、そういう世界みたいだなって」

 招待した夏希をはじめとした友人や職場の仲のいい同僚、親戚は、なかなか自衛官と会うこともないため、かっこいいだの、素敵だの目を輝かせてざわざわとしている。
 結婚式の中盤になり食事のタイミングに入ると、夏希は持ち前の行動力とコミュニケーション能力を駆使して、自衛官と接触していた。

「そうだよな。でも、俺にとっては結芽のドレス姿に目を惹かれてしまうよ。似合っている。綺麗だ」

 結芽がお色直しで選んだドレスは、ブルーとホワイトのグラデーションが美しいドレスだ。先端にいくにつれて青が濃くなっていくデザインだ。そして腰のあたりにリボンが三重に重なっておりゴージャスな雰囲気は西洋のプリンセスを思わせる。そして、刺繍がスカートにあしらわれており、贅沢に仕上げられている。

「えっ、うっ……ありがとう。航平くんも、かっこいいよ」
「結芽にかっこいいと思ってもらえて嬉しいよ」

 礼服を着た航平が微笑みながら自分を見つめて綺麗だと言うその姿が、本当に王子様のようで照れてしまった。

 結芽は結婚式を楽しみながらも、自衛隊式の特徴的な結婚式の様子に特別なひと時を過ごした。
 特に印象的だったのが礼装姿の自衛隊の同僚たちがサーベルアーチをつくりそれをくぐり抜けるというセレモニーだ。
 途中でサーベルが降りると先に進めないためキスをする。という厳格な雰囲気もほんわかとした楽しい雰囲気も味わえた良い思い出となった。

 初のふたり暮らしをしたアパートでの生活を1年ほどしたあたりで航平は呉に転勤が決まった。
 最近は自衛隊職員や家族への負担軽減として転勤や単身赴任を削減するはたらきがあり、転勤があるとしてもブロック内が基本となった。それもあり、全国区での転勤もないように考慮されるようにもなっている。
 今回の転勤では呉になってしまったが、今後は子どもも生まれたら違ってくるはずだ。

 もちろん結芽は航平の転勤についていくこととした。そのためしばらくは専業主婦となるが、呉での生活が安定したら職場探しをする予定だ。どうやら自衛隊病院の医療事務に枠があるようなので、そこを第一希望に就職活動をしようと決めている。

 航平からの愛を受け、自己肯定感は高まり、自分が幸せになってもいいのだと感じられるようになった結芽は、以前よりも笑うことが増えたし、ネガティブになることが減ったと自覚している。

《この先の未来も、航平が隣にいるのなら、私は幸せだろう》
 そう思えた。
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