毒で苦い恋に、甘いフリをした。
「ニカ、日誌出してくるから先に帰ってていいよ」

「えー、待ってるよ?」

「もー。どうせ彼氏くんと待ち合わせしてるんでしょ?校門出たらバイバイなんだから行きなー」

「そう?ごめんね、いつも」

「うわっ。なんかマウントっぽい」

「あはは。そんなんじゃないって!結芽も早く帰んなね」

「はいはーい」

日直っていうこと以外はいつも通りの放課後だった。

ニカに彼氏がいないときは一緒に遊びに行くけれど、
それにしても彼氏と付き合って別れて、また誰かと付き合って、のスパンが短いニカと過ごす放課後のほうが珍しい。

そういえば今はどんな人と付き合ってるんだろう。

その人のことを覚えるのが先か、別れちゃうのが先か、自分の中で密かにやっていた賭けはもうやめた。

職員室の担任のところに日誌を届けてから教室に戻ったら、窓際でゆうれいが運動場を見ていた。

「ゆうれい?」

「ゆめ」

振り返ったゆうれいがそのまま体の向きを変えて壁にもたれかかった。

白いカーテンが風で揺れて、ふわっと舞い上がる。
サッと流れてゆうれいの体を隠すたびに、カーテンに影が透ける。

月曜日は体育や選択授業、音楽とか移動教室が多くて、ゆうれいともまともに話ができていなかった。

「サッカー、見てた?」

「サッカー?見てたけど見てなかった」

「どゆこと」

「見てたけど、ちょうどかっちゃんがシュートするとこで目逸らしちゃってて。見れなかった」

「へー。良かったじゃん」

「なんでよ」

「見たってしょうがないよ。ただシュート決めただけだもん」

「それが凄いんじゃん」

「それなら俺だって決めたよ?見てた?」

「ごめん、見てない。たぶんバレーの試合してた」

「ばーか」

「なにそれ」

ゆうれいの隣に並ぶ。
今日は雨も降っていないし湿気も少なくて、吹き込む風が気持ちよかった。
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