先輩のこと、好きになってもいいですか?


「それは、……違います」

「だよね。おれ、そんなこと一言も言ってないし」


しかめられていた先輩の眉のしわが、だんだんとなくなっていく。


「美辺さん、おれの気持ちもちゃんと考えてくれたの?」

「……、え?」


先輩に目を向けると、少しだけ暗い色を宿した瞳と目が合った。


「思わせぶりなことされておいて、その次の日にはなかったことにしろなんて言われて振り回されるおれの気持ち、考えたのかって訊いてる」

「……っえ、あの、考えていませんでした。ご、ごめんなさい……っ、だけど、先輩が振り回されるなんて、そんなことあるわけな、…」


先輩の細くて長い綺麗な人差し指が、わたしの唇にそっと添えられる。

だから、驚いたわたしはそれ以上喋れなくなった。


「美辺さんは、一体おれの何を知って、そう断定できるの?」


どこまでも波立たない静かな瞳にじっと見つめられる。


至近距離で見つめられ、わたしの頬は自然と赤く染まる。

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