先輩のこと、好きになってもいいですか?
帰宅場所は、家族が自分のことを待ってくれている、電気の付いた温かい家なのだろう。
そう思い、視線を下に向けておれは歩き出した。
駅から離れた場所に来ると、急に住宅街へ入る。
ここ周辺は子供のいる核家族の世帯が多く、大きな幼稚園が1つあったのを覚えている。
なぜ覚えているのかというと、おれも小さい頃そこに通っていたからだ。
その例の幼稚園の前を通りかかった、その時。
前から幼い女の子を抱きかかえた、おれと同じ高校の制服を着た女が歩いてくるのが見えた。
その背格好がおれの知っているものにとても似ていて……。
「あの」
思わず、声をかけた。
「……っへ?」
素っ頓狂な声が聞こえる。
それを聞いた途端、おれは確信した。
鈴の音のように綺麗な彼女の声が、おれの耳にすっと入っていく。
驚いた顔をしたまま、ぽかんと口をあけてあほ面でおれを見つめている。
「かわ、……」