双子パパは今日も最愛の手を緩めない~再会したパイロットに全力で甘やかされています~
 体の関係だったって、私に言えっていうの?

 私だってそうは思っていない。スタートはどうあれ、私はちゃんと愛されていたって信じている。

でも、そんなふうに割り切るしか、やりきれないの。

 これ以上航輝さんと話を続けるのは無理だ。辛すぎる。

「言わなくてもわかるでしょう? 未来のない関係よ」

 彼が嫌いな投げやりな言葉を残し、私は足早に紗空のもとへ向かった。



 勇気を出して行ったあの日。マンションの入り口で彼を呼び出そうとして声をかけられた。

『えっと……』

 戸惑う私に、彼女ははっきりと言った。

『私は彼の婚約者です。――あなたは?』

 彼の部屋番号のボタンを押して、彼の返事を聞いて、彼女は自動ドアの内側に消えていく。

 彼女と一緒にエレベーターに乗る勇気はなかった。

 今日再会したのは運命というなら、あの日こそ、彼女と出会った のは運命だ。






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