再会したスパダリ社長は強引なプロポーズで私を離す気はないようです
「千夏さん、久しぶりです!」

「わっ…」


ちょうど仕事が終わり家に帰る途中、名前を呼ばれた。すると返事をする間もなく、いきなり抱きしめられた。


「ちょっ…誰かと間違ってませんか?」


目の前にいる彼は白馬の王子様が降り立ったんじゃないかってくらいカッコよくて。身長はもうすぐ190いきそうなくらい高身長で、スーツだって明らかにオーダーメイドで高そう。


普通の人がスーツを着てても、「ふーん」ってくらいにしか思わないのに…。彼はスーツ越しでも鍛え上げられたであろう筋肉がチラ見えしている。


そんな彼が私の知り合いなはずない。絶対に。

「間違ってません。桜井千夏さんですよね? 今は保育士でしたっけ? 昔、子供が好きだって俺に話してましたし、今の仕事はピッタリですね」

「へ?」

私が保育士だってことを知ってる? 子供は昔から好きだったけど、彼にいつそんなこと話したっけ? 記憶がない…。


「あ、すみません。その反応だと俺のこと覚えてないですよね」

「ご、ごめんなさい」

「謝らないでください。無理もないですよ」

「え?」

「だって俺と千夏さんが最後に会ったのは6年も前の話なんですから」

「そんな前に?」


思い出そうとしても思い出せない。なぜだろう? こんなに素敵な人なら記憶の片隅に残っていてもおかしくないはずなのに。
< 1 / 44 >

この作品をシェア

pagetop