まだ見ぬ恋の待ち合わせ (短)

「って、穂波ちゃんに失礼だよね。

初恋も〝まだ〟な私と一緒にされちゃあさぁ」


そう――私は、恋をしたことがない。

恋の始まりが分からないまま、この十五年間を生きてきた。


「好きな人っていっても、家で待ってくれてるカノン以上に好きな子はいないし」


カノン――とは我が家で飼っている愛犬のこと。

チワワ特有の大きな瞳で見つめられたら……もう骨抜きになるくらい愛しいの。


「ワンちゃんなら、いくらでも好きになれるのになぁ……」


どうして対(たい)人間となると、こうも上手くいかないんだろう、なんて。

自分のふがいなさに、再びため息をついた時だった。


ポツ、ポツ――


「わ、え、なんで⁉ 今日は晴れの予報じゃなかったのー⁉」


空を見ると、日が照って明るいのに雨が降っている。


えぇ、通り雨?

傘なんて持ってきてないよー!
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