迷路の先には君がいた

「由里さん、それはだめよ。あなたは大事なスワンの本店コンシェルジュなのよ。お得意様にご迷惑がかかる……」

「お嬢様。私にとって一番大切なのはお客様でも、ホテルでもなく芙蓉様です。他は私にとっては二の次です」

「お嬢様は子供のいない私達夫婦にとって娘同然です。あなたを守らずして、誰を守ると言うのです。亡くなられた奥様や大旦那様も皆さん、芙蓉様のことを私共に頼んだんですよ。お嬢様だけは守ります」

「圭吾さん……でも、スワンが……」

 由里は言った。

「由里のお得意様はどうしてもというならニューレジェンドへ行ってもらいましょう。貝原様もお客様が増えて喜んでくださるでしょう」

 結局、由里は夫と離れて、芙蓉と一緒にレジェンドホテル本店近くの女子寮へ入ったのだった。



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