迷路の先には君がいた

 サムエルホテルグループの買収の話は耳にしていたが、芙蓉には関係ないと思っていたのだ。

「私は遠慮します。関係ございませんので……」

 すると、息子の繁が彼女の腕を引いた。

「スワンホテルもうちの傘下に入るなら、関係あるだろ。資金は同じ袋に入るわけだからね」

 芙蓉は繁の顔を見た。スワンだけは渡さない。

 もちろん自分も身を挺してスワンを守るが、支配人の圭吾にも、芙蓉を捨ててもスワンを守れときつく命じていた。

「スワンの現状は、現支配人の細井さんの方が詳しいです。私は……」
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