EASY GAME-ダメ男製造機と完璧上司の恋愛イニシアチブ争奪戦ー
 ――本当に……っ……!最期の最期まで、姉さんはっ……‼

 怒りと憎しみ、悲しみの入り混じった声がリビングから聞こえ、あたしは、足を止めた。

 ――……まったくだな。
 ……だが、義兄(にい)さんも義兄(にい)さんだ。


 義姉(ねえ)さんの不倫が許せなくて、無理心中(・・・・)だなんて――……。


 その時、まだ幼かったあたしには、よく理解できなかった。
 けれど、年齢を重ね、いろんな事を知るにつれ、事実は否が応でも突き付けられ――。


 あたしの父親は、恋愛に奔放な母親に、結婚してからも――あたしが産まれてからも浮気をされ続け、我慢の限界を迎えてしまって。

 睡眠薬で眠らせた母親とともに――車ごと、海に転落死した。

 父親の遺書には、あたしの事を頼む、と、叔母夫婦に書かれてあったようで――仕方なしに、幾ばくかの遺産とともに、引き取られた。


 ――あたしは、結局、二人に捨てられたのだ。


 幼いながらに、自分に接する叔母夫婦の仮面のように張り付けられた笑顔と、不自然なほどに可愛がる態度に――自分が望まれて来たのではないのだけは、気づいていたけれど。
 せめて、良いコだったら、捨てられなくて済むんじゃないか。
 ――そう思い、自分の事は、自分で。
 更に、叔母夫婦の代わりに、家事手伝いのような事までするようになった。


 ――みぃちゃんは、何でも自分でできて、良いコね。
 ――ホント助かるわー!アタシ達は、この子達で、手一杯だから。


 ――アンタは、もう、一人でも大丈夫よね。


 就職して、家を出る時、心底ホッとした”両親”に、あたしは、深々と頭を下げた。


 ――さようなら。


 ――今まで、本当に、お世話になりました――……。


 これで、あたしは、この人達とは別れよう。
 自分で生きていけるベースができたんだから、もう、迷惑はかけられない。

 この人達以外の親戚など、顔も見た事も無いし、今までが今までだったから、向こうからも敬遠されていたのは、理解している。



 ――……アンタ、その暗い顔、何とかなんないかしら⁉

 中学の時、孤立しかけたあたしに声をかけてくれた舞子は、どうやら事情を知った上でだったようで。
 小さな町での無理心中事件は、結構な話題性があり、昔から、事あるごとに言われ続けていたから――有名だったんだろう。
 こそこそと陰口をたたかれてるのは、気づいていたけれど――その頃には、実の両親が死んだ理由もわかっていたし、仕方ないものだとあきらめていた。
 けれど、情に厚い舞子には、それは、許せるものではなかったらしくて。

 ――美里が悪い訳じゃない。何なら、アンタは被害者よ。

 あたしが来て、すぐに生まれた弟妹たちのため、生活が徐々に乱れてきた家に迷惑はかけたくなくて、中卒で就職しようと思っていたら、舞子に止められた事もあった。
 ――中卒と高卒、大卒じゃ、生涯年収ってヤツも違う。
 ――自分が頑張った分だけお金が入るんなら、せめて、高校までくらいは出よう。
 そんな風に説得され、舞子と同じ高校に入り――どうにか、無事卒業、就職できた。

 ――舞子は、親友であり、恩人でもあるんだ。


 でも――刷り込まれた”良いコ”の呪いは、簡単に解けるものではなくて。
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