あやかし猫社長は契約花嫁を逃さない

猫は友情の証、熱い絆

「あ、社長、猫」

 ホテルのルームサービスよろしく、シルバーのワゴンを押して現れた犬島が見たままの事実を口にした。
 ずぅんと落ち込んだ様子で、猫宮はエジプト座りから香箱座りに座り直す。
 見るに見かねて、龍子は励ましを口にした。

「社長、さっきみたいに威勢よくかましてくださいよ。『猫じゃない、猫宮だ』って。お手々ないないしてる場合じゃないですよ!」

 長いしっぽもくるりと体に巻き付けた猫宮は、沈んだ声で呟く。

「猫だ……」
「お認めになられている……!」

 二人の横をすり抜けて、窓際のテーブルに皿を並べていた犬島が、くすっと笑って言った。

「すっかり仲良しになっていますね」
「お前の目は節穴か」「わかります!? 私、昔から断然、人間より猫なんで!」

 思い思いの言葉を口にする二人をよそに、皿を並べ終わった犬島が「ごはんですよー」とのどかに呼びかけてきた。
 すっかり空腹に苛まれていた龍子は、いそいそと歩み寄る。

「すごい……! ホテルの朝食みたいですね! 焼き立てパンに、スコーン、サラダとふわふわオムレツ! ローストビーフやフライドポテトまでついてボリューム満点!」
「ジャムは三種類、すべて自家製。クロテッドクリームとあわせてどうぞ。ジュースは搾りたてのりんごジュース。コーヒーはポットに淹れてきているのでお好きなだけ。紅茶もあります」
「嬉しい~、頂きます!」

 椅子に手をかけたところで、龍子はふと肝心なことを思い出して振り返った。

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