幼なじみの天才外科医に囚われたら、溺愛甘々生活が始まりました
だけど、10年以上も距離が開いてしまった今、どのくらいの距離感で接するべきなのかわからない。


「いつもあんな感じなの?」
「まぁ……普段から小言は多いような」

「そうか。我慢してた?」


翔くんがそう言いながら、そっと私の髪に触れた。不意の出来事に、心臓がドキドキと暴れ始める。

どうして……。
どうして、翔くんはこんな風に私に触れるの?

聞きたいけど、今は聞くのが怖い。もしも私の一方通行な想いだったとしたら、彼に迷惑が掛かるだけだ。

助けてくれたからって、舞い上がってはいけない。


「真衣?」
「だ、大丈夫……です」

「大丈夫じゃないだろ?」


そう言いながら、翔くんが私の後頭部に触れた。

そんな翔くんの手を振り払い、私は外科外来を飛び出す。「真衣!?」と、彼が呼んだのが聞こえたけれど、私は止まらなかった。

ダメだ。これ以上翔くんの近くにいたら、自分の気持ちをコントロール出来なくなってしまう。


……好きなのは、私だけ。
翔くんにとって私は、ただの幼なじみでしかないんだから。

そう自分に言い聞かせて、私は社員食堂へと向かい、日替わり定食を注文。ただ、いつもと違って日替わり定食の味がよくわからなかったのは、この日が初めてだった。
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