婚約破棄したら『悪役令嬢』から『事故物件令嬢』になりました
 今回の話があるまで、ふたりきりで会ったこともないし、じっくり深い話もしたことなかったのに、って私は彼からの求婚に疑心暗鬼になったの。


 未だに独身のライはすごく人気がある。
 多分、彼には公に出来ない恋人が居て、私はお飾りの公爵夫人になるのか、と。
 そう考えたら、もう笑えなくなってしまった。 



「もしルーカスとの婚約が無くなったら今度こそ、と決めていた。
 1ヶ月の謹慎が解けたら、直ぐに言わないと駄目だ、とわかっていた。
 カイルがちょこまか君に会いに行くから、気が気じゃなかったよ」

「何言ってるの?
 カイルが私に会うのは、アレンのついでよ?」

「……つくづくカイルを気の毒に思うけれど、俺は狡いからね。
 誤解はそのままにしておくよ」



 堪えきれないように、ライオネルが笑って。
 私もなんだかスッキリして。
 霧の中を彷徨っていたのに、辺りが急に明るくなって目の前が晴れていく気がした。



 それから私達は楽しく午後を過ごした。
 今までの思い出話や、これからのことも。
 クールだと思っていたライオネルは、意外に話好きだった。



 ライオネルのお母様、いつもきちんとされているモンゴメリー公爵夫人にもご挨拶をして。
 事故物件云々に関しては、ご夫人方やご令嬢達が否定をしてくださっていて、つまらない噂など消えるのも時間の問題よ、と教えていただきました。


 ライオネルからの有り難いプロポーズの返事もさせていただいて。


 お暇の挨拶をした私に、公爵夫人は素早く辺りを見回して。
 家令に送ってくれる馬車の手配をしていたライオネルが、こちらを向いていないことを確認して、耳元に囁かれました。


「本当は何回ルーカスに、チビと言ってやったの?
 旦那様の手前、ライに詳しく聞けなかったの。
 どうにもならない外見のことを人前で言う男に、辟易している女性は多いわ。
 貴女の話に、密かに皆様喝采をあげていたのよ」


 
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