婚約破棄したら『悪役令嬢』から『事故物件令嬢』になりました

3 王子が婚約破棄を認めてくれました

 セオドア第3王子殿下。

  このひとは元々地声が大きいので、叫ばないでも聞こえています。
 私達はいわゆる幼馴染みという間柄です。 
 私の母と王妃陛下が王立学園の同期で仲良しグループを構成していた故、王城の庭園で私達7人はよく遊びました。



 もう、この場では殿下と呼ぶのはやめましょう。
 ここから先は、テディで行かせていただきますね。
 セオドア第3王子殿下、って名称が長くって、いちいち面倒ですよね?



 名指しされた私の前で、人波が分かれていきます。
 私はしっかりと前を見て進みました。 
 今宵の私はいつもとは違って、高く髪を結い上げ、靴のヒールも高めのものを履いています。


 ドレスの色は黒。
 裾と腰の辺りにだけ銀色に輝く細かいスパンコールをちりばめて。
 アクセサリーは長く垂らした、一粒の雫型ダイアモンドの銀のネックレスのみ。


 元々大柄な私はそうすることで、より身長が高く見えるのですが…
 今夜は特別です。


『見下すようにね』

 そう言われた言葉を忘れずに。


 負けるものかと、思いました。
 婚約者に蔑ろにされた私を、嗤いたければ嗤えばいい。
 伯爵家の、武人の娘の矜持が私を支えています。

 この為に、ひとりでこの場に参加したのです。



『欠席はしないでくれよ?』


 いいじゃない、期待に応えてやろう、と思いました。


 婚約者が私にあげる、と言ったサプライズ……受け取ってやろうじゃない。

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