夜の帝王の一途な愛
妊娠も内心とても喜んでいたと記憶している。
しかし、流産と言う悲しい結末を迎え、追い討ちをかけるように俺からの別れを告げられ、俺はなんて残酷な事をしてしまったんだろう。
俺はあゆみに聞いてみた。
「あゆみ、何か望みはあるか」
「どうしたんですか、急に」
「あゆみはいつも俺の事ばかり優先してくれてるだろう、あゆみが何かやりたい事とか優先したい事とかないの?」
「そうですね、凌が仕事をしやすい家庭環境を作る事ですね」
「俺の事じゃなくて、例えばバッグが欲しいとか、旅行に行きたいとか、母親になりたいとか」
一瞬あゆみの表情が変わった。
やっぱり子供が欲しかったんだと今更ながらに気づいた。
俺は仕事に行く前に以前あゆみがお世話になった産婦人科に足を運んだ。

「お久しぶりです、その節はありがとうございました」
「あゆみさんはお元気?」
「はいおかげさまで」
「今日はお一人でどんな御用かしら」
先生はなんとなく察しがついている様子だったが、俺に確かめるように聞いた。
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