夜の帝王の一途な愛
手の震えが起きる度にスマホを手に取り、私の連絡先を開く、閉じる、開く、閉じる、この繰り返しをしていた。
「あゆみ、助けてくれ、あゆみ、あゆみ」
手の震えが止まらない、呼吸が苦しくなって、頭痛が彼を悩ます。
今彼の置かれている状況を彼自身が把握出来なくなってきたのだ。
あまりの苦痛に気を失う、目が覚めると自分が何をしていたのか、さっぱり思い出せない
そんなことの繰り返しの中、彼の記憶から私は消えた。

不思議なことに手の震えは起きなくなった彼を悩ます頭痛も・・・
私と出会う前の記憶が彼の中に存在していた。
彼はそれからバリバリと仕事を熟し、ホストクラブの売り上げも上がった。
彼はホストクラブのリニューアルを計画し実行に移した。
リニューアルオープンを二ヶ月後に控えたある日彼は入り口や店内に飾る花をチョイスすべくパソコンを開いた。
その頃私はフラワーショップの店長を任されており、売り上げをアップさせようとお店のホームページを開設していた。
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