私の心の薬箱~痛む胸を治してくれたのは、鬼畜上司のわかりづらい溺愛でした~
「!! しゅ、主任……」
 突然マイクを通して全社員の前で窘められた優悟君は、ばつの悪そうな表情で私から距離を取る。

 声の主は壇上にいた。
 鬼のような形相で。
 隣では社長がにこやかにそれを見守り、その一歩後ろには皆川さんがニコニコと楽しそうに笑ってこちらに手を振っている。
 何、このラインナップ。

「ごほんっ。失礼しました。では、社長のあいさつを」
 何事もなかったかのようにつなげる雪兎さんに、会場の人々は視線を壇上に向ける。
 そして社長はマイクを受け取ると、笑みを浮かべたまま口を開いた。

 「今日はわが社の創立パーティへの参加、本当にありがとうございます。急ではございますが、ここで皆様に発表をさせていただこうと思います。……私は今年度いっぱいで、社長の座を退くこととなりました」

 予想だにしていなかった発表に、会場のあちらこちらから戸惑いと驚きの声が上がる。
 社長が退く?
 じゃぁ会社はいったい誰が──。

 「来年度から私の子どもが後を継ぐことになりました。紹介しましょう。息子の和泉雪兎です」
 「!? いずみ……ゆきと……?」

 って……雪兎さん!?

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