【更新】雇われ妻ですが冷徹騎士団長から無自覚に溺愛されています
 頭が割れるように痛い。
 カビ臭い匂いが鼻を掠め、リーゼはゆっくりと目を開けた。

 意識を取り戻したリーゼがまず目にしたのは、薄汚れた木壁だった。
 ズキズキと突き刺すような頭部の痛みに顔をしかめながら周囲を見回す。
 どこかの小屋のようだ。壁際に縄や毛布らしき布切れが無造作に転がっている。

 リーゼは板敷の床の上に、横向きになって寝転がされていた。
 縄のようなもので手と足をそれぞれ縛られていて身動きが取れない。

(ここはどこなの……?一緒にいた、御者や護衛は……)

 少しでも状況を探ろうと、リーゼは首を伸ばして再び辺りを見回そうとした。
 
 その時だった。ギィッと木が軋む音がして、リーゼはビクリと肩をすくめた。

「目を覚ましたか」

 酷薄な響きを含んだ男の声が、リーゼの鼓膜を静かに揺らした。
 ゆっくりと、背後から足音が近づいてくる。
 まるで死がにじりよってくるようだった。リーゼの拍動が危機を察知して強く、速くなる。

「ようやく見つけたぜ」

 腰の辺りに衝撃が走り、リーゼの体が無理矢理反転させられた。
 腹部を踏みつけられ、圧迫感に顔を歪めながら、リーゼは己を見下ろす男の相貌を見つめた。
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